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列島エイリアンズ 防災情報格差編(1)南海トラフ地震の注意喚起に震える外国人たち 災害が起きた瞬間、命を守る方法のレクチャーなし

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月28日 11時0分

宮崎県での震度6弱の地震を受け、南海トラフ地震臨時情報を発表した気象庁=8日午後、東京都港区(夕刊フジ)

地震や台風、ゲリラ豪雨と、天変地異が相次ぐ今夏。日本人、あるいはそれ以上に不安な思いを強いられているのは、来日して間もない外国人たちだった。

「『南海トラフ地震臨時情報』が発表されていた8月8日から1週間は、みんなそわそわしていて仕事が手についていない様子でした」

そう話すのは、4人のベトナム人技能実習生を受け入れている中国地方の土木業者代表、A氏だ。

「彼らの国には大きな地震がないらしく、事務所でつけているテレビに『巨大地震注意』とずっと表示されているのが、特に彼らを不安にさせたようです。車で移動中、橋の上で信号待ちをしていた際、大型トラックが通ったせいで路面ごと少し揺れたのですが、地震と勘違いして慌てて車外に飛び出そうとした者もいたほどです」

この時、同乗していた日本人社員とともに、ベトナム人実習生の奇行を思わず笑ってしまったというA氏だったが、のちに反省したという。

「別のベトナム人実習生から、『地震が起きたらどうすればいいのか』『地震に備えて買っておいた方がいいものはあるか』といった質問を受けたとき、地震に関する指導を彼らにまったくしていなかったことに気づきました。訪日直後に監理団体が(技能実習生を対象に)行う研修でも、地震や防災に関するレクチャーはなかったそうです。とりあえず、ベトナム語でアクセスできる自治体の防災情報サイトなどを彼らに教えましたが、避難所に関する情報などが中心で、災害が起きた瞬間に命を守るための情報手段として、どの程度、役に立つのかは未知数です」

災害に関する情報格差により、あわや溺死という事態に遭遇したのは、静岡県内に住む日系ブラジル人男性。

「8月22日夜、大雨が降るなか原付きバイクでアンダーパス(立体交差)を潜ろうとしたとき、普通の水たまりではない水圧を前輪に感じ、あわてて停車しました。片足を地面に着けると、くるぶしあたりまで水につかる深さだった。その後、アンダーパスの入り口までバイクを押して引き返したとき、頭上に設置された電光表示板に『冠水注意』と表示されているのを再確認してハッとしました。走行中にパッと見ただけでは、意味が頭に入ってこなかった。原付ではなく車で通っていたら、水に沈んで出られなくなっていたかもしれない」(日系ブラジル人男性)

このアンダーパスに英語による冠水注意の表示は見当たらなかったという。 =つづく

外国人材の受け入れ拡大や訪日旅行ブームにより、急速に多国籍化が進むニッポン。外国人犯罪が増加する一方で、排外的な言説の横行など種々の摩擦も起きている。「多文化共生」は聞くも白々しく、欧米の移民国家のように「人種のるつぼ」の形成に向かう様子もない。むしろ日本の中に出自ごとの「異邦」が無数に形成され、それぞれがその境界の中で生きているイメージだ。しかしそれは日本人も同じこと。境界の向こうでは、われわれもまた異邦人(エイリアンズ)なのだ。

■奥窪優木(おくくぼ・ゆうき) 1980年、愛媛県出身。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国で現地取材。2008年に帰国後、「国家の政策や国際的事象が、末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに取材活動。16年「週刊SPA!」で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論され、健康保険法等の改正につながった。著書に「ルポ 新型コロナ詐欺」(扶桑社)など。

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