1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

日本の解き方 低迷するドイツ経済 先進7カ国で唯一、2年連続マイナス成長 脱原発で脆弱になったエネルギー構造、中国経済への過度な依存も

zakzak by夕刊フジ / 2024年10月17日 11時0分

ドイツ経済省は9日、2024年の経済成長率見通しを従来の0・3%増から0・2%減へ下方修正した。先進7カ国(G7)で唯一、2年連続のマイナス成長となるとみられる。

まずドイツ経済の特徴から述べよう。今の共通通貨ユーロは、経済効率を最大化する「最適通貨圏」の範囲を超えて拡張している。周辺国には必ずしも有利とはいえないが、中心国のドイツは有利である。

つまり、ユーロのレートは経済力がない周辺国にとっては割高で不利だが、経済力の強いドイツにとっては割安になり有利である。このため、ギリシャやスペイン、ポルトガルはしばしば経済苦境に陥るが、ドイツは好調だった。それなのにドイツ経済が低迷するとは驚きである。

景気停滞の主因についてのドイツ政府の公式見解は、「ロシアのウクライナ侵攻以降のインフレを発端とした国内消費の冷え込み」というものだ。たしかに天然ガス、電力、石炭、原油価格の高騰により、22年10月時点のインフレ率は前年同月比12・8%上昇と歴史的な高水準に達した。22年は6・9%上昇と過去30年間で最高となり、23年も5・7%上昇だった。24年8月は前年同月比2・0%上昇と、前月の2・6%から減速し、ようやく落ち着いた。

たしかに、高いインフレ率は消費需要などを減退させ、実質経済成長の足かせになる。

しかし、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格上昇は欧州全体に影響があるのに、ドイツの経済成長だけが他国と際立って低い。

その理由の一つとして考えられるのは、ドイツにとって最大の貿易相手国である中国の経済が低迷していることだ。

ドイツの中国への経済依存度は他の欧州諸国に比べて高い。そのため中国経済が減速するとドイツ経済への悪影響は他の欧州諸国よりも大きくなるのだ。

もう一つの理由は、初めの理由と密接に関連しているというか、その背景になっているが、やはりエネルギー構造の脆弱(ぜいじゃく)性だろう。

アンゲラ・メルケル前政権では、日本の原発事故を受けて、脱原発を急いだ。原発は安価で安定なエネルギーであると見直されているが、ドイツはそれらを無視した。これは世界からは失敗であるとみなされている。

さらに、脱原発の最終段階でロシアによるウクライナ侵攻があった。このため、原発が動かせない状況でロシアからの天然ガスが途絶えることとなって、エネルギー価格が急騰した。隣国のフランスは原発を維持していたのでエネルギーの打撃はドイツよりはるかに少なかった。実際、ここ2年間でのインフレ率はフランスのほうがドイツより低い。

もしドイツが脱原発をやらなかったら、中国経済の低迷の影響はあるものの、エネルギーでここまで打撃を受けずに済んだだろう。

ドイツの急ぎ過ぎた脱原発と過度な中国への経済依存は、日本も他山の石とすべきである。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください