勝負師たちの系譜 棋士編入試験に挑む西山朋佳女流三冠 女流棋士が男性と同じ資格目指すのは2人目 実力は十分、期待したい女性初の四段
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月20日 15時0分
4日、西山朋佳女流三冠が「朝日杯将棋オープン戦」の予選で、阿部光瑠七段に勝ち、棋士編入試験の権利を獲得。即座に西山は試験を受けると表明し、大きな話題となった。
プロ棋士になるには、奨励会に入って三段まで昇り、半年に一度の三段リーグで上位2人の枠に入って、棋士(四段)になるのが通常のコース。
もう一つは、アマが全国大会で上位の成績を取れば、プロ棋戦にアマ枠で出場でき、公式戦で10勝以上かつ、6割5分以上の成績を取れば、プロ(フリークラスの四段)になれるというもの。
このルールは、女流棋士にも当てはまる。西山は今回の勝ち星で、13勝7敗となって、規定に達した。
それにしても、普通は対局の翌日以降に表明するものだが、午後の対局を控えた昼休みに事務局に行って表明したから、西山と親しい棋士も驚いたようだった。
女流棋士が男性と同じ棋士の資格(すべての男性棋戦に出場できる)を編入試験で目指すのは、2022年の福間(旧姓里見)香奈女流五冠に続いて2人目。
福間は試験の五番勝負を、残念ながら3連敗で失格となったが、西山には期待する声は大きい。
というのも、西山は三段リーグ在籍時代、14勝4敗の成績を挙げながら、頭ハネ(順位の差)で昇段できなかった実績があるからだ。
半年で18局のリーグで、14勝は普通なら上がれる成績である。藤井聡太竜王・名人でさえ、1期で駆け抜けたとはいえ、成績は13勝だった。その最終局の相手が西山である。
西山にしてみれば、目の前で13勝の昇段者を見た後、自分は14勝で上がれない現実に、思うものがあっただろう。
西山は奨励会の年齢制限(26歳の誕生日までに四段)に達しない前に、女流棋士に転向したが、棋士の夢は諦めていなかったと思う。
試験は新四段から5人と戦い、3勝で合格というもの。同じ試験で合格した一番新しい棋士は、アマ出身の小山玲央四段だ。
以前から西山は、公式戦でフリークラスや年配の棋士にはほとんど勝っている。昨年の朝日杯でも、同じ年に2つのタイトル戦に出た佐々木大地七段に勝って女流棋士として初めて2次予選進出を決めるなど、実力は十分。
生きている間は、女性の四段を見ることはないだろうという私の予想を、破ってくれるのではないかと期待している。
■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。
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