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実録・人間劇場 アジア回遊編~インド・ネパール(19)安宿と安いメシ屋とマリファナの街・タメル地区 1泊、そしてまた1泊…沈むバックパッカーたち

zakzak by夕刊フジ / 2024年6月28日 6時30分

インドから来るとやけに居心地がいい=ネパール・カトマンズ(夕刊フジ)

ネパールの国境に隣接するインド北部ソノーリはコンパクトな街だった。観光地化していない国境の街というのは、宿と飲食店以外に求められる機能がない。それでいて両国を行き来する人たちで活気にあふれているため、独特な雰囲気がある。

中国、ベトナム、ラオス、タイ、そしてインド、ネパールといくつもの国境を歩いて渡ってきたが、国境の雰囲気がたまらなく好きである。もともと精力的に観光をしようという質でもないが、有名な街にいるとさすがに観光をしないともったいないという気持ちになってくる。

しかし、名もなき国境の街はただコーヒーをすすりながら通りを眺めているだけでも罪悪感を覚えることなく、有意義な時間を過ごしている気になれるのだ。

ソノーリの何の変哲もないホテルに1泊し、昼すぎからネパールを目指す。「目指す」と言っても、国境付近にあるイミグレーションでパスポートにスタンプを押してもらい、10分ほど歩いて門をくぐるだけだ。

門をくぐった後はネパール側のイミグレーションで数千円のビザ代(15日間)を払い、パスポートに入国のスタンプを押してもらう。時間にしてたったの15分。だが、また新たな旅が始まる予感が込み上げてくる、とても貴重な時間なのだ。

ネパールに入ってすぐのところにバスターミナルがある。特にチケットの予約はしていないので、数台あるバスの中からカトマンズ行きのバスを探していると、バス会社の従業員らしき若いネパール人男性が私を呼んでいる。

「カトマンズとポカラ、どっちに行くんだ?」

ソノーリにいる外国人の行き先など、ほぼカトマンズとポカラの二択である。教えてもらったバスに乗り込み、私はネパールの首都であるカトマンズに向かった。

カトマンズのバス停に着いたときには午後9時を回っていた。バス停から旅行者が集まる「タメル地区」へタクシーを走らせる。タメル地区は安宿と安いメシ屋とマリフアナであふれ返っている。それゆえに1980年代にはヒッピーブームに吸い寄せられた欧米人たちで湧いた。そのときと比べれば、多少はおとなしくなっているのかもしれないが、私が訪れた2017年当時も大量の外国人観光客、それも大きなバックパックを背負った長期滞在者たちが闊歩していた。

インドからネパールにやってくると、明確に両国の違いを感じる。それはネパールには、あのうっとうしい客引きたちがいないことだ。客引き自体はいるのだが、引き際をわきまえているのである。そんな心地よさから、インドからネパールへとやってきた旅人たちはついつい「もう1泊、もう1泊……」と、安宿に沈んでいってしまうのだ。

■國友公司(くにとも・こうじ) ルポライター。1992年生まれ。栃木県那須の温泉地で育つ。筑波大学芸術学群在学中からライターとして活動開始。近著「ルポ 歌舞伎町」(彩図社)がスマッシュヒット。

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