大橋純子の50年 永遠のシティポップクイーン バックバンド「美乃家」と活動の大橋純子 ヒット曲「シンプル・ラブ」で全国区に 近年の世界的ブーム〝シティポップ〟草分け的存在
zakzak by夕刊フジ / 2024年11月13日 11時0分
1976年5月、大橋純子のセカンドアルバム「ペイパー・ムーン」が発売された。洋楽カバーが中心だった前作と異なり、全曲がオリジナル。制作に2年を要したのは楽曲を集めるのに苦労したからだ。担当ディレクターの本城和治は、大橋のパートナーの佐藤健のほか、林哲司やミッキー吉野ら新しい感覚を持った若手の作家を積極的に起用。のちに狩人「あずさ2号」(77年)などをヒットさせる作詞家の竜真知子も新人だったが、本城が作家事務所を紹介すると目覚ましい活躍を見せるようになる。歌謡曲が主流だった当時、洋楽的なセンスにあふれたポップスや才能ある作家を送り出す大橋のプロジェクトは業界でも評判となり、人気絶頂の山口百恵が愛聴盤として「ペイパー・ムーン」を挙げたこともある。
ここまでの楽曲はすべてスタジオミュージシャンの演奏で録音されたが、大橋にはかねて「ソロではなく、バンドのリードボーカルとして歌いたい」という強い思いがあった。その夢をかなえてくれたのが、北島三郎を擁する北島音楽事務所で、バックバンドの結成を認められた大橋は「美乃家セントラル・ステイション」との活動を開始。77年以降は美乃家の演奏によるアルバムを年2作のハイペースで発表していく。
その美乃家には佐藤健(キーボード)、見砂和照(ドラムス)、のちに一風堂を結成する土屋昌巳(ギター)ら腕利きミュージシャン7人が参加した。サードアルバム「RAINBOW」(77年4月)からシングルカットされた「シンプル・ラブ」はスペインで開催されたマジョルカ音楽祭で3位入賞、東京音楽祭世界大会で外国審査員団賞を受賞し、オリコン最高44位のスマッシュヒットを記録する。
一躍全国区となった大橋と美乃家のライブには音楽好きの若者が詰めかけ、ホールでのコンサートツアーができるほどの人気を獲得。大学からのオファーも相次ぎ〝学園祭の女王〟となる。普段は洋楽しか扱わないディスコが例外的に「シンプル・ラブ」をかけていたのは、ソウルやファンクの要素を採り入れた洗練されたサウンドが支持されていたからだ。近年、シティポップが世界的なブームを呼んでいるが、彼女はその草分け的存在であった。 (濱口英樹)
■大橋純子(おおはし・じゅんこ) 1950年、北海道生まれ。74年にデビューし、日本人離れした歌唱力でヒットを連発。その音楽性がシティポップブームで再注目される中、2023年に73歳で死去。11月6日にデビュー50周年を記念した「THE BEST OF 大橋純子1974―1988」(ユニバーサル ミュージック)=写真=と「THE BEST OF 大橋純子 1988―2024」(バップ)が同時発売された。
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