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日本の解き方 都知事選「大量立候補」問題 供託金引き上げは選挙権の侵害で期待薄 諸外国にならえば…署名の義務付けが現実的か

zakzak by夕刊フジ / 2024年6月27日 6時30分

神宮通公園前に掲示されている東京都知事選の選挙ポスター。24人が立候補した政治団体のポスターが多数を占めている(夕刊フジ)

東京都知事選には過去最大の56人が立候補し、選挙ポスター掲示板が不足したり、無関係なポスターを貼らせるなどの事態も起きている。NHKの政見放送も長時間に及ぶ可能性が指摘されているが、これらの問題をどう考えればいいのだろうか。

インターネット時代になって、選挙掲示板や政見放送の宣伝効果が増幅され、立候補が売名行為にビジネスとしてつながっているのが、大量候補者の背景にある。実際、今回立候補者を大量に出した政党の党首は、供託金を上回る収益が得られそうだと公言している。

そこで、まず思い浮かぶのが供託金の引き上げだ。都道府県知事選挙の場合、供託金は300万円で、有効投票総数の10分の1にいかないと供託金は没収される。300万円に設定されたのが1992年である。

東京都区部の消費者物価指数は1992年が98、2023年は105・4なので、この間のインフレ率を考慮すれば320万円にしてもいい。しかし、これでは抑制効果は少ないだろう。

しかも、供託金の引き上げの評判は悪い。そもそも供託金により立候補を制限するのは選挙権の侵害であり、売名かどうかは有権者が判断すべきだという意見もある。

高額の供託金については、選挙権を侵害するという訴訟も多くなされている。ただし、最高裁は「供託金制度は立候補を萎縮させる効果があり、立候補の自由に対する制約になっている」としつつも、「制度決定は国会の裁量で、それを逸脱しているとはいえない」としたが、今の段階での供託金引き上げには相当な批判が生じるだろう。

ちなみに、国会図書館調べでは、供託金は、経済協力開発機構(OECD)諸国で38カ国中13カ国が採用しているに過ぎない。先進7カ国(G7)では日本と英国だけだ。

かつてはフランスとカナダも供託金制度を導入していたが、フランスは1995年、カナダは2018年に廃止した。G7の他の国、米国、ドイツ、イタリアには供託金制度はない。なお、英国の供託金は国政選挙でも10万円に満たないほど少額だ。こう考えると日本だけが先進国の中で高い供託金で突出している。

では、他国がどうしているかといえば、一定の有権者の署名を義務付けている国もある。国政選挙であるが、ドイツでは200人、カナダでは100人、フランスでは500人などといったところだ。

であれば、日本でも現実的な案は、一定数の有権者の署名の義務付けだろう。これを現在の供託金と併用すれば、今回のような泡沫(ほうまつ)候補の大量出現をある程度防げるだろう。出馬することが経済的なメリットや売名行為になる国政選挙や一定規模の都道府県知事選挙に導入することを検討すべきではないだろうか。

なお、今回の都知事選で不適切なポスターがあったが、警察が事前警告することで、大きな問題にならなかったのはよかった。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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