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前立腺肥大症・最新治療 日本で多く用いられる術式「ホーレップ」とは きわめて根治性高く大出血リスクも低い 米国とは異なる代表的手術療法

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月2日 6時30分

阿南医師(夕刊フジ)

前立腺肥大症の「根治」を目指す治療法には、手術療法がある。昔は開腹して行われていた時代もあったが、現在は尿道内部に膀胱鏡(ぼうこうきょう)を挿入して、前立腺を内側から削ったり、レーザーで蒸散させたりして行う手術が一般的だ。具体的にどんな手術なのかを、四谷メディカルキューブ泌尿器科科長、阿南剛医師の解説で見ていこう。

いま、全国の医療機関で普及している前立腺肥大症の手術と言えば、尿道内に挿入した膀胱鏡を見ながら電気メスで前立腺の組織を内側から削っていくTURP(経尿道的前立腺切除術)、同様に尿道内部からレーザーを照射して組織を蒸散していくPVPやCVP(経尿道的前立腺レーザー蒸散術)、ホルミウム・ヤグレーザーというレーザーを当てて、前立腺をくり抜くように切除するHоLEP(ホーレップ)いう術式がスタンダードとなっている。いずれも尿道内部からアプローチする低侵襲手術で、開腹する必要はない。

「TURPは古くから行われてきた代表的な術式。難度は低い半面、前立腺のサイズが大きいと1回では削り切れず、2回に分けて手術しなければならないことがあります。術者の技術の差が出やすい術式とも言えます」

同様に普及している術式がPVPだ。

「レーザーで止血しながら進められるので血液サラサラ系の薬を飲んでいる患者にも安全にできる術式である半面、根治性が弱い点がデメリットと言えます」

TURPとPVPは、アメリカでの前立腺肥大症手術における普及率は高いが、日本で多く用いられるのは、HоLEPである。切除術や蒸散術と異なり、肥大部分をまるまる切除する術式のため、アプローチはだいぶ異なる。

「前立腺をミカンに例えると、皮と房のあいだにある白い筋の部分を剥がしていくような手術です。ここをキレイに剥がせば、前立腺は内部をくり抜くことができる。くり抜いた前立腺は一度膀胱に入れて、細かく断裁して外に出します」

きわめて根治性が高く、大出血を招くリスクも低いので日本ではこの術式を導入する泌尿器科医が多い。

社会保障制度だけでなく、医療技術の面でもメリット

「HоLEPは技術的には難しく、この技術を習得するには上手な医師の下で30~50例の経験を積む必要があると報告されています。日本の医師はそうしたことを厭(いと)わないので普及しましたが、アメリカでは技術的に難しい手術のため日本のように普及せず、前立腺肥大症手術の中で4%程度と言われています」

それどころか、日本では前立腺肥大症に対しておなかに穴をあける手術はほぼ行われないが、アメリカではロボット手術による前立腺摘出術を行うケースがあるという。

手先の器用さと、技術習得への努力を面倒がらない国民性の日本で生活する私たちは、国民皆保険という社会保障制度だけでなく、医療技術の面でも得をしている―ということを、知っておいて損はないだろう。 (取材・長田昭二) 【あすは、「前立腺肥大症の最新治療について」解説する】

■阿南剛(あなん・ごう) 四谷メディカルキューブ泌尿器科科長。2008年、名古屋市立大学医学部卒業。聖路加国際病院、東北医科薬科大学病院等を経て、22年4月から現職。専門は前立腺肥大症と尿路結石症の内視鏡手術。日本泌尿器科学会専門医・指導医。日本排尿機能学会専門医ほか。

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