1万本を見た映画記者 極私的スター名鑑 佐藤浩市 父・三國連太郎の壁を乗り越え…日本映画の大黒柱に 男気があり、父との確執など何でも話せる正直な人
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月17日 11時0分
俳優の世界は親の七光が通用するほど甘くない。デビュー時は注目されても実力がなければ忘れられる。佐藤浩市は名優、三國連太郎の3番目の妻の長男で、幼少期は父親とともに撮影所で過ごしたが、両親の離婚で苦労を重ねた。
1981年に五木寛之原作の話題作「青春の門」と翌年の「青春の門 自立篇」で主人公の伊吹信介を演じ、映画デビュー。フレッシュな魅力でブルーリボン賞新人賞を獲得している。
その後も着実にキャリアを積み、壮大なスケールの大作「敦煌」(88年)は自宅マンションを解約してまで長期中国ロケに挑み、主人公の趙行徳を好演した。
筆者はジョン・ローンと共演した「チャイナシャドー」(90年)の香港ロケを数日間取材。佐藤は撮影の待ち時間に現地の中国人スタッフと中国将棋を楽しんでいた。
「今回は英語のセリフなので苦労したけど、ここ(香港)にいると、誰もあの人(三國)のことを知らない。だから自分を素直に認めることができて楽しんでいる」
男気があり、父との確執など何でも話せる正直な人だと思った。
趣味はゴルフ、大の酒好きで甘党。年齢とともに演技の幅を広げた彼は時代劇も得意で「忠臣蔵外伝 四谷怪談」(94年)では日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞を受賞。父親と共演の「美味しんぼ」(96年)でも同賞に輝き、超大作や話題作に欠かせない俳優になった。
昨年は話題作「せかいのおきく」で息子の寛一郎と共演。老境のボクサーを好演した主演作「春に散る」など9本の出演作が劇場公開された。まさに日本映画を支える大黒柱の役割を担っている。
■佐藤浩市(さとう・こういち) 1960年12月10日生まれ、63歳。東京都出身。
■垣井道弘(かきい・みちひろ) 1946年、広島県三原市生まれ。明治大学文学部卒。週刊誌「女性自身」の記者を経て、映画評論家になる。著書に「MISHIMA」(飛鳥新社)、「今村昌平の製作現場」(講談社)、「ハリウッドの日本人」(文芸春秋)、「緒形拳を追いかけて」(ぴあ)などがある。
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