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実録・人間劇場 アジア回遊編~インド・ネパール(29)死ぬまでにもう一度だけ行きたい「カソール」という奇妙な楽園のヒミツ 灼熱のニューデリーから15時間

zakzak by夕刊フジ / 2024年9月6日 15時30分

ケミカルチックな絵が描かれた車=インド・カソール(夕刊フジ)

灼熱のニューデリーから15時間

南インドから北インドにかけ、1カ月の旅をしてきた中で、私には死ぬまでにもう一度だけ行きたいと切に願う場所がある。そこは、首都のニューデリーからバスを乗り継ぐこと約15時間。パキスタンや中国の新疆ウイグル自治区に程近い「カソール」という小さな町だ。

ニューデリーの摂氏50度にせまる、うだるような暑さと、けたたましいクラクションの音と、うっとうしい客引きたちに嫌気が差し、とにかく北へ行きたかった。しかし、カソールまでの道のりは険しく、加えてバスの運転手も真横がガードレールもない崖だというのに、気が狂っているとしか思えないコーナーリングを終始見せるので終始生きた心地がしない。

「こんな道の先に人が住んでいるのか?」

そう思わざるをえなかったが、果たしてたどり着いた先には山々に囲まれた町があった。昨日まで「息をするだけで寿命が縮まる」とも評されるニューデリーにいた身としては、同じインドとは思えないほどに空気が澄んでいる。未舗装の道も多く、砂ぼこりが舞っているが、5分も歩けば人も車もいない沢に出る。

インドの都心であれば暑さで川の水もぬるく、そもそも汚くて手も入れられたものではないが、カソールの川は泳ぎたくなるほどきれいだった。その場で服を脱ぎ、淀みに体を浮かべていると、ほんの数分で寒くて体が震えてきた。ゲストハウスの冷房で冷え切った部屋とはまるで違う心地よさである。

カソールの町を歩いていると、建物の外壁や車のボディーなど至るところにケミカルチックなイラストが描かれていることに気がつく。北インドは世界的にも有名な大麻の原産地である。カソールでもそこかしこでハシシュ(大麻樹脂)が売られ、大麻ショップが乱立している。中に入ってみると、大麻はもちろんのこと、吸引器具がズラリと並んでいた。

インドでは大麻所持は法律で禁じられているとはいえ、正直、どこの町でも売っている。しかし、カソールはインドを見渡してみても、よりカジュアルに大麻が売られているのだ。

夜になると町にはどしゃ降りの大雨がやってきた。傘を差して食堂を探していると、30人ほどのカッパを着た白人の集団が山の方向へ歩いているのを見つけた。

「これからチャラルに行くんだ。君も行くか?」

聞けば山道を30分歩いた先にあるチャラルという村でこれからレイブパーティーが行われるのだという。私には大雨の中、素性の知れないヒッピーたちと山登りをする勇気がなかったが、そのときおじけづいてしまったことを後悔している。大麻で酩酊(めいてい)するつもりはないが、レイブパーティーというものを、この目で見てみたかったのだ。

■國友公司(くにとも・こうじ) ルポライター。1992年生まれ。栃木県那須の温泉地で育つ。筑波大学芸術学群在学中からライターとして活動開始。近著「ルポ 歌舞伎町」(彩図社)がスマッシュヒット。

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