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ニュース裏表 有元隆志 香川選出の国民民主・玉木雄一郎氏に聞かせたい 渋沢栄一と双璧と呼ばれた実業家・中野武営の金言「私は酒を妾としている」

zakzak by夕刊フジ / 2024年12月13日 11時0分

石井裕晶著『中野武営 渋沢栄一と双璧と呼ばれた男』(夕刊フジ)

花田紀凱氏が編集長を務める月刊『Hanada』で、リベラルの牙城とも言える岩波書店の本を紹介するのは珍しいことだろう。安倍晋三政権で内閣審議官などを務めた谷口智彦氏が「今月この一冊」というコーナーで、岩波書店から出ている石井裕晶著『中野武営 渋沢栄一と双璧と呼ばれた男』を取り上げた。

地元・香川県では親しみを込めて「ぶえいさん」と呼ばれる中野武営(たけなか)は、明治期から大正期にかけての政治家、実業家だ。「近代日本経済の父」と称される渋沢栄一から東京商業会議所(現・東京商工会議所)会頭を引き継ぎ、陸軍二個師団増師反対や減税運動を展開し、大正デモクラシーを牽引(けんいん)した人物である。

渋沢と比べると知名度は低いが、経産官僚だった筆者の石井氏は週末を使い、コツコツと武営研究を続けた。

なぜここで武営を取り上げたかというと、47都道府県の中で最後の置県となったのが香川県で、高松藩勘定奉行の長男として生まれた武営は、その実現のために尽力したからだ。

現在、衆院香川選挙区からは1区に立憲民主党の小川淳也幹事長(53、当選7回)、2区に国民民主党の玉木雄一郎代表(55、当選6回=役職停止中)、3区に自民党の大野敬太郎氏(56、当選5回)が選出されている。

野党幹部2人が香川県選出というわけだ。明治維新で高松藩は幕府側に付き朝敵となった。武営の働きがなかったら香川県の〝独立〟はなかったかもしれない。

谷口氏は「資本主義を育てる際に守るべき原則を、誰に教わるでなく経済人としておのずから体得、血肉化していたからこそ、中野は悪税・増税反対の一大運動を率いることができた」と評価している。

石井氏もあとがきで、武営が取り組んだことをそのまま現代に当てはめることはできないとしながらも、「世界を相手にする厳しい競争に勝ち抜けるだけの産業や経済の力をつけることができるか、将来のため目先の利害にとらわれることなく、政治の力で経済と財政、安全保障を両立させることができるか、米国と中国とどのように関わっていくべきか、地方の自治を強め地域の持続的発展を図ることができるか」と問いかけている。

小川氏ら50代の3人は、この課題の解決に尽力しなければならない。衆院で与党が過半数割れとなるなかで、これまでのような野党体質から脱皮し、政権担当能力を示すべく小川、玉木両氏に課せられた責任は大きい。大野氏には中堅議員として自民党建て直しに取り組むことが求められる。

最後に同書によると、武営が活躍した当時、「紳士面をして居る連中で妾を持たぬものは、腕がない」と言われていたが、武営は「私は酒を妾としている」と言って、渋沢らのように妾や愛人を持つことはなかったという。玉木氏に聞かせたい言葉である。 (産経新聞特別記者・有元隆志)

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