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日本の解き方 中国製EVの関税引き上げ問題 環境政策の観点では不合理だが…過剰生産による輸出看過できず 深刻な機能していないWTO

zakzak by夕刊フジ / 2024年6月26日 11時0分

中国製の電気自動車(EV)や太陽光パネルについて米国が関税を引き上げる方針を打ち出している。これらが環境対策の面や産業の面で日本にとってどこまで合理的なのか。

実際、この関税引き上げは「1974年通商法301条」に基づくもので、表向き中国の過剰生産という不公正な慣行による経済の混乱を防ぎたいという経済安全保障の意向であり、反中国政策によるものではないとしている。

ただし、環境保護の観点では、できるだけ低コストのEVや太陽光パネルを使うことに反するので、米国がそれらの関税を引き上げるのは合理的ではない。ジョー・バイデン政権としては、環境保護の看板を下ろさずに、自国産業で環境政策を進めるために関税引き上げというロジックだろう。

大統領選では、環境政策を気にしないドナルド・トランプ前大統領は、対中政策と米国第一主義から躊躇(ちゅうちょ)なく関税引き上げを主張するので、バイデン氏としてはその対抗策という意味合いが強い。

もっとも、産業面からみれば、中国の過剰生産による輸出は看過できない。中国は他国を犠牲にして自国の成長を促進するため、ダンピング輸出をしている。その証拠に生産能力が過剰になっているにもかかわらず投資を続け、不公正な慣行で低価格に抑えた輸出品を世界の市場に氾濫させているというわけだ。この観点からは、中国からの特定製品について関税を引き上げるのは合理的となる。

関税引き上げについて、環境政策の観点と産業政策の観点では答えが真逆になる。一方、貿易論からみれば、自由貿易が望ましいので、関税はできるだけ低い方がいい。戦後はこの考え方が有力であったが、現在自由貿易体制の前提である世界貿易機関(WTO)が実質的に機能していない。最も深刻なのは紛争処理制度がほぼ機能していないことだ。

WTOには、紛争が2国間交渉で折り合えない場合、WTOルールの下で解決する裁判のような制度がある。2審制で、まず1審の紛争処理小委員会が審理し、その判断が不服なら最終審の上級委員会に上訴できる。

しかし、米国が上級委の委員選任を拒否しているため、上級委の審理は19年12月から止まったままだ。その理由は、中国の不公正な貿易慣行についてWTOが適切に対処できていないことだ。

こうした現状を考えると、関税の引き上げは米国のみならず、欧州連合(EU)など他のところでも不可避だ。日本だけが、自由貿易の理念にこだわると、環境保護や貿易面ではいざ知らず、産業政策や経済安全保障の観点から、大きく国益を損なってしまう。

今や日本だけが自由貿易の理念を叫んだところで、世界に与える影響は皆無なので、リアリストとして振る舞うべきだ。

しばしばブロック経済化が第二次世界大戦の「原因」といわれるが、実は「結果」である。安全保障上の緊張を原因として、ブロック経済化も世界大戦も招いたというのが真相だろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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