知っておくと100倍楽しい 大河「べらぼう」キーパーソン 〝先見の明がある〟くせもの政治家、田沼意次 上にも下にも広く目を配り…一町人である蔦重の言葉にも耳を傾ける
zakzak by夕刊フジ / 2025年1月22日 6時30分
歴史上、田沼意次といえば、賄賂大好き、汚職まみれの政治家のように言われることが多く、時代劇では悪役や黒幕のように出てくることが多かったが、近年、その開放政策が評価されるようになっているという。
NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の意次(渡辺謙)は、先見の明があるくせもの政治家といった印象だ。
享保4(1719)年、江戸本郷に生まれた意次の父・意行は、紀州の徳川吉宗の足軽だった。八代将軍吉宗の嫡男家重の小姓となった意次は、九代将軍となった家重の御用取次となり、ついに1万石の大名となった。主人公の蔦屋重三郎(横浜流星)が本屋を始めた時期には、十代将軍家治(眞島秀和)の右腕として、幕府財政を立て直すため、商業重視、貨幣経済政策へと改革を推し進める。その自由な空気の中、蔦重らの出版も盛んになるのだが、保守派の老中首座・松平武元(石坂浩二)らから意次は敵視される。
このドラマの田沼の興味深い点は、上にも下にも広く目を配っていることだ。第1話、吉原が寂れて女たちが苦しんでいることに怒った蔦重が、吉原のライバルの宿場を取り締まってほしいと訴える。しかし、意次は宿場の繁栄は重要と一蹴。蔦重に「(吉原は)人を呼ぶ工夫が足りぬのではないか」と言う。目が覚めた思いの蔦重は、「ありがた山の寒がらすにございます!」と頭を下げる。
江戸城では、武元らと渡り合い、屋敷では一町人である蔦重の言葉も聞く。意次の意向を受けて働く平賀源内(安田顕)は、意次がこの国を変えようとしていること、異国に持ち出された金銀を取り戻すため、源内に山師として金銀銅鉄を掘り当てさせようとしていることを話す。しかし、田沼の先見性はなかなか受け入れられない。
史実では、天明2(1782)年に全国的な凶作となり、翌年には浅間山が大噴火。倹約令が出たものの、人々は大飢饉(ききん)に苦しむことになる。反田沼派の動きが活発化する中、天明4(1784)年、意次の嫡男・意知に悲劇が起きる。意次は晩年、領地を減らされるが、家臣に暇を出す際にも当面の暮らしに困らないように手当金を出している。田沼の目指す政治が蔦重の事業にどう関わるかも大いに気になるところだ。
(時代劇研究家)
■べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ 1月5日にスタートしたNHK大河ドラマ第64作。脚本は「JIN―仁―」(TBS系)や「ごちそうさん」(NHK)を手がけた森下佳子。
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