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ドクター和のニッポン臨終図巻 小説家・大崎善生さん 何度も死を意識しながら…藤井聡太さんが生きる希望に 王位就任式では「声なき祝辞」で仕事の本質紹介

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月19日 10時0分

作家の大崎善生氏(夕刊フジ)

『聖(さとし)の青春』という小説を知っていますか? 幼少の頃からネフローゼという腎臓の難病を患いながら将棋の世界で活躍した村山聖さんの人生を描いた小説です。「東の羽生、西の村山」と呼ばれるほどの天才棋士でしたが、29歳のときに膀胱(ぼうこう)がんで早世されました。松山ケンイチさんが村山聖棋士を、東出昌大さんが羽生善治棋士を演じて映画化もされています。

この作品の作者であり、将棋以外にも、数々の問題作を世に送り出してきた小説家の大崎善生さんが8月3日に都内の自宅で死去されました。享年66。死因は、下咽頭がんとの発表です。

大崎さんは2022年のはじめ、突然声が掠れるようになり、まあいいかと放っておいたら数カ月後にまったく声が出なくなってしまったとのこと。さすがにおかしいと思い病院で検査。咽頭がんのステージ4bと診断されました。

咽頭がんは、早期発見が難しいがんの一つです。がんが発生した場所ごとに「上咽頭がん」「中咽頭がん」「下咽頭がん」に分類されます。中咽頭がんと下咽頭がんは、口の中や食道にがんができている場合もあり、声の掠れとともに、食事が喉を通りにくくなることで初めて発覚するケースもあります。

ステージ4bで下咽頭がんが見つかった大崎さんは、当初は手術も抗がん剤もできる状態ではないと言われていましたが、ある時、主治医から「希望は薄いけど(手術を)やるだけやってみますか?」と提案されたそうです。

そして12時間にも及ぶ手術では、喉ボトケや声帯、食道や甲状腺などから、合計96カ所の腫瘍を摘出しました。同時にご自身の腸の一部を切り取り、それを移植する食道再建手術も行うという大がかりなものでした。この手術を行うことで、手術後も食事ができるようになります。

大崎さんは昨年の11月、藤井聡太さんの王位就任式に出席しています。声を失った大崎さんの代わりに、妻で女流棋士の高橋和(やまと)さんが、祝辞を代読されました。

大崎さんは半年に及ぶ入院生活で、何度も死を意識しながらも、看護師さんらに励まされ、また、藤井さんの王位戦を目指す姿が生きる希望につながったというお話をしていました。

この全20分にも及ぶ「声なき祝辞」のなかで、大崎さんは、「MASTERY for SERVICE」という言葉を紹介しています。

「出来る限りの努力を重ねて技術を磨き、それを持って人のために奉仕せよ」という意味だそうです。

人間は社会的動物です。将棋、文学、医療…どの世界に身を置いても、人のために努力を重ね技術を磨くこと。それが「仕事をする」ということの本質なのでしょう。

■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。公益財団法人日本尊厳死協会副理事長としてリビング・ウイルの啓発を行う。映画『痛くない死に方』『けったいな町医者』をはじめ出版や配信などさまざまなメディアで長年の町医者経験を活かした医療情報を発信する傍ら、ときどき音楽ライブも。

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