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八木秀次 突破する日本 長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典のイスラエル排除問題、民主主義国家の結束乱すな 林官房長官は人ごとのような発言

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月14日 6時30分

日本人はもっと「価値」の問題に敏感でなければならない。民主主義国家の普遍的価値のことだ。

長崎市で9日行われた「長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」に、G7(先進7カ国)のうち、日本を除く6カ国(米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ)とEU(欧州連合)の大使と臨時大使が欠席した。「格下」の出席で対応した。長崎市がイスラエルの招待を見送ったことへの抗議だ。

6カ国とEUの大使と臨時大使は7月19日付で、長崎市の鈴木史朗市長宛に直筆のサイン付き書簡を送付し、イスラエルを除外した場合、ハイレベルの参加が難しくなると伝えていた。「イスラエルを、ロシアやベラルーシと同列に扱うのは残念で、誤解を招く」というのが理由だ。

鈴木市長は6月、「(パレスチナ自治区)ガザの危機的な人道状況や国際世論に鑑みれば、式典において不測の事態が発生するリスクが懸念される」としてイスラエルの招待を保留した。そして、7月31日に「政治的判断ではなく、式典を平穏かつ厳粛に、円滑に行いたいという考えからの判断だ」と正式に招待を見送った。

しかし、その判断は「政治的」以外の何ものでもない。

広島市は6日の「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」に例年通り、イスラエル大使を招待したが、何の混乱もなかった。加えて、長崎市は在京パレスチナ代表を招待している。広島市は招待していない。

朝日新聞は8日付の1面トップで、「長崎市に書簡『イスラエル招かぬなら参加困難』」「米欧6カ国大使、式典欠席へ」と、あたかも内政干渉のように伝えている。2面で「ロシアは批判してイスラエルは擁護する、という米英のダブルスタンダード(二重基準)がここでも表れた」(三牧聖子同志社大准教授)との識者談話も掲載したが、問題はそこではない。

6カ国とEUは、長崎市の対応に「反ユダヤ主義」を見た。イスラエルをロシアと同列視すること自体が「反ユダヤ主義」なのだ。これは民主主義国家の普遍的価値に関わる。

イスラエルによるガザ地区への攻撃を「ジェノサイド(大量虐殺)」と批判する向きもあるが、ナチスのユダヤ人虐殺(ホロコースト)に使われる言葉であり、イスラエル批判に使ってはならない。この辺りのデリケートな感覚が日本人には分かっていない。

林芳正官房長官は「式典に誰を招待するかは主催者の長崎市で判断することであり、政府としてコメントする立場にはない」(7日)と人ごとのように述べたが、政府は長崎市を「指導」すべきだった。権威主義国家との対立が高まるなか、日本が民主主義国家の結束を乱していることに自覚的であるべきだ。

■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院政治学研究科博士後期課程研究指導認定退学。専攻は憲法学。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学教授。山本七平賞選考委員など。安倍・菅内閣で首相諮問機関・教育再生実行会議の有識者委員を務めた。法務省・法制審議会民法(相続関係)部会委員、フジテレビジョン番組審議委員も歴任。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)など多数。

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