森永康平の経済闘論 〝AIバブル崩壊〟は始まったのか 半導体大手エヌビディア、市場予想を上回る決算発表も株価6%下落のワケ
zakzak by夕刊フジ / 2024年9月5日 6時30分
8月28日、米国の半導体大手エヌビディアが第2四半期の決算を発表した。売上高、利益ともに市場予想を上回り、決算と同時に500億ドルの自社株買いを発表したが、取引後の時間外取引で同社の株価は6%下落した。第3四半期の売上高や利益率の見通しが市場予想を下回ったことが嫌気されたかたちだ。
世界的な人工知能(AI)ブームを追い風に同社の株価は年初来で150%も上昇しており、一部ではAIバブルを指摘する声もある。
市場予想を上回る決算を発表したにもかかわらずエヌビディアの株価が下がったことを受けて、いよいよAIバブルが崩壊したのではないかと悲観的な見方をする向きもあるが、私としては同社の決算の結果を受けてあくまで利益確定の売りが出たために株価が下がっただけだと考えている。
しっかりと同社の決算の内訳をみてみると、データセンター向けの売上高は前年同期比2・5倍となっており、世界的にAI分野への投資が相変わらず拡大しており、今後も同社の製品への需要は堅調に推移するだろう。
とはいえ、世界的なAIブームを背景に、日本でも半導体関連銘柄は軒並み株価を上げており、なかには本当にAI関連といえるのか、と疑問に思うような銘柄の株価まで上昇しているケースもあり、前述のようにAIバブルを指摘したくなる気持ちも理解ができる。
たしかに、過去を振り返れば、2000年代初頭に米国ではITバブルが発生し、その後バブル崩壊を体験している。当時、ITバブルはドットコムバブルとも呼ばれ、ITとは無縁の企業であっても、「企業名の最後にドットコムとさえ追記しておけば、株価は上がる」というジョークまで誕生していた。
バブル崩壊後、多くのIT企業やバブルに乗っただけの企業は消えていったものの、インターネットやITは私たちの日常生活に浸透し、いまとなってはインターネットやITと無縁では社会が成り立たない状態となっている。また、バブルが崩壊したとしても、米アマゾンドットコムをはじめとして、ホンモノのIT企業は事業を拡大してその存在感を高め続けている。
AIはまだ私たちの生活に浸透しきってはいない。近い将来、誰もがグーグルで検索をしたり、アマゾンで買い物をする感覚で、AIを自然と利用する時代が来るだろう。その時にどの企業のサービス、商品が世に受け入れられているかを考えることが投資家には求められている。
■森永康平(もりなが こうへい) 経済アナリスト。1985年生まれ、運用会社や証券会社で日本の中小型株のアナリストや新興国市場のストラテジストを担当。金融教育ベンチャーのマネネを創業し、CEOを務める。アマチュアで格闘技の試合にも出場している。著書に父、森永卓郎氏との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など。
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