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マネー秘宝館 「良いものと売れるものは違う」メルカリから学んだ現実 高価格がつくのは〝需要の高い〟もの はざまで苦しむビジネスマンたち

zakzak by夕刊フジ / 2024年10月9日 11時0分

良きモノと売れるモノは必ずしも一致せず…。ビジネスマンの悩みの1つ(夕刊フジ)

最近、息子がメルカリにハマっており、不要になった持ち物をせっせと売りに出している模様。もちろんとがめやしません。部屋も片付くし、プライシングなど商売の基本を学べるし、いいことずくめじゃありませんか。

ある日、息子から「いらない本ない? メルカリで売ってあげるよ」と声を掛けられました。なにやら道具屋に声をかけられた仕入れ先の気分です。面白半分に「じゃあ頼むよ」と数冊の本を渡しました。しばらくして「どうなった?」と尋ねると、何と「ほとんど売れたよ」との回答。正直、びっくりしました。ここから立場が逆転です。メルカリで売買した経験のない私は、息子からその仕組みや「値付けのコツ」を教わることになりました(笑)。

いやぁ、息子からレクチャーを受け、マジで勉強になりました。その後は親子で仮説を立てつつ、さまざまな本に値付けをしつつ出品。「売れた・売れない」の試行錯誤の結果、いろいろなことが分かってきたのであります。これぞ親子で学ぶ生きた勉強。

高く売れるかどうかはやはり「需要と供給」です。皆が「読みたい・入手したい」と望む「需要の高い」本は価格が高くなります。これは時代が変わっても変わらぬ商売の大原則なのであります。さぁ、肝心なのは次の「需要が高い本はどんな本なのか?」ということ。これこそが高価格実現のカギ、商売のキモ。

結論として分かったこと。人気なのは「出たばかりの新刊本」であり、かつ「マネー・ファッション・健康」といった「身近なネタ」を扱っている本でした。

この段階で私の蔵書はまったくもって高く売れない現実にぶつかります。私の持っている本は古くて難しめの経営書や芸術・歴史・哲学ばかり。これがまったくメルカリ利用者にマッチしません。私が「良い本」だと思うものほど「ぜんぜん需要なく不人気」であり、売れ残るという結果になりました。この残酷な結果に息子から冷ややかな視線を送られるハメになりました。

こちら夕刊フジ読者ならお分かりいただけると思うんです。「良いものと売れるものは違う」という事実を。世界で一番売れているラーメンはカップヌードルですが、あれを「世界一うまい」と思っている人は…どうでしょう。そしてテレビに出まくりの芸人さんが「芸達者」とは限りません。会社で最も出世している人間が「性格がいい」とは限りません。もうこのへんでやめましょう。

良いものを作るということ、そして、売れるものを作るということ。これは似て非なる事柄です。これまで日本人は「良いものを作る」ことに熱心に取り組んできました。幸せなことにその努力が実を結んで「売れる」ことが多かった。しかし昨今、「良いもの」への努力が必ずしも実を結ばなくなってきています。では「売れるもの」に専念できるかといえば、これにはどこか精神的に抵抗がある。このはざまで苦しむ私たち。いやはや今回はメルカリで大変な勉強をさせてもらいました。

■田中靖浩(たなか・やすひろ) 公認会計士、作家。三重県四日市市出身。早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティング会社勤務を経て独立開業。会計・経営・歴史分野の執筆・講師、経営コンサルティングなど堅めの仕事から、落語家・講談師との共演、絵本・児童書を手掛けるなど幅広くポップに活躍中。「会計の世界史」(日本経済新聞出版社)などヒット作多数。

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