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日本の解き方 中国〝領空侵犯〟と日本の弱腰 国際法では撃墜してもおかしくない事案 繰り返す不気味な回答、警告射撃ぐらいはすべきだった

zakzak by夕刊フジ / 2024年9月3日 6時30分

中国軍機が初めて日本の領空を侵犯してから約1週間が経過した。この間の日本の対応や中国側の反応はどうだったのだろうか。

長崎県五島市の男女群島の南東沖上空で8月26日、中国軍のY9情報収集機1機が日本の領空内を飛行した。これまで、ドローン(無人機)などによる領空侵犯はあったが、有人軍用機による領空侵犯はなかったという。

今回の事案がかなり深刻であることを、国際法の観点からみておこう。

領海と領空ではその対応に違いがある。領海は、干潮時の海岸線から12カイリ(22・224キロ)を超えない範囲の海域で、沿岸国の主権が及ぶ。だが、「航行の自由」の観点から、軍艦を含むすべての船舶は領内での「無害通航権」が認められている。

一方、領空は領土および領海の上空で、こちらも当然当該国の主権が及ぶ。

そして領海と異なり、領空については無害通航権が認められていない。要するに、領海侵犯より領空侵犯は厳しく、明らかな国際法違反として撃墜される可能性もある。

実際、1983年には大韓航空機がソ連(当時)の領空を侵犯して撃墜された例もある。それ以降、民間機への武器使用は国際民間航空条約(シカゴ条約)で禁止されたが、領空侵犯した軍用機は、撃墜されても文句を言えないわけだ。

そうした意味では、中国がこのような危険な行為をした真相は不明だが、ミスであればあまりに軽率だし、ミスであったとしても、撃墜されなかったことで既成事実を積み上げてくる可能性もある。

日本側が「厳重に抗議」したことに対して、中国側が「意図的ではなかった」と繰り返しているのは、やや不気味である。

日本の海上自衛隊の艦艇が7月に、中国の領海内を中国側の承認を得ずに航行したことの意趣返しという見方もあるが、無害通航権のある領海侵犯と無害通航権のない領空侵犯では同じに考えられない。

今回の領空侵犯した軍用機は、電波情報を収集する機体とみられ、九州に拠点を置く自衛隊や米軍の基地の電波情報の収集が目的かもしれない。いずれにしても領空侵犯の前に警告、領空侵犯時に警告射撃を行ってもしかるべきだ。

民間のドローンによる領空侵犯についても撃墜してもよかったはずだが、日本はそうした対応をしてこなかった。うがった見方をすれば、日本は領空侵犯しても攻撃しないと中国に見なされているかもしれない。

2023年2月には中国の気球が米国領空を侵犯した。中国側は民間機と主張したが、米国は無害通航権がなく軍事目的だとして撃墜した。

自民党の二階俊博元幹事長が率いる日中友好議員連盟は北京を訪れた際、今回の中国機による領海侵犯の経緯について中国政府に遺憾の意を伝えたというが、「意図的ではない」という回答にとどまったとみられる。議連は議員外交を通じ、日本と中国の政府間の対話を後押しするためにあるので、その役割を発揮してほしかった。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

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