BOOK 落語家・桂竹丸 〝敗者の言い分〟知ればもっと歴史が面白い アマノジャク的に戦国時代を斬った『桂竹丸の戦国ひとり旅』
zakzak by夕刊フジ / 2024年6月29日 15時9分
――戦国は「淀で始まり淀で終わる」と
「戦国の男たちは出世のために人を殺してのしあがりますが、淀君は人を活かすことによって生き延びる作戦をとりました。浅井三姉妹の長女として妹を守り、三英傑(信長・秀吉・家康)と深くかかわり、豊臣秀頼を産んだ。落城を3回も経験した。時代の流れに翻弄されたドラマチックな生涯は、戦国時代を象徴する人物とも言えるでしょうね」
――ゆかりの地も巡っています
「武田信玄の菩提寺の恵林寺(山梨県甲州市)を見たときには、織田信長の大軍から焼き討ちされ、燃え盛る山門の上で快川(かいせん)和尚が『心頭滅却すれば火も自ら涼し』と言って100人以上の僧侶とともにこの世を去ったこと、また多くの人たちが時間をかけて苦労しながら、あんなに立派なお寺が建ったんだと考えると、逆に信長はなんとひどい仕打ちをしたのだと…」
――新たな新作落語も生まれそうです
「もし淀君伝を高座でやるのなら、女物の着物を羽織ってカツラをかぶり、『家康はウソばっかりついて…』とぼやくような噺にしようかな。今回の本では登場しませんでしたが、キリスト教を日本に伝えたザビエルも落語になりそう。黒紋付を着て、首のまわりにシャンプーハットを巻いて。やりますかね!」
■『桂竹丸の戦国ひとり旅』 敬文舎2200円(税込み)
淀君、島津義弘、武田勝頼、石田三成、前田利家の5人を取り上げ、それぞれの生涯を辿り、ゆかりの地を訪ねながら戦国時代とは何かを考える。約150点のカラー写真とともに系図、年表などを用い、時代背景や人物を理解しやすいように工夫されている。映画「影武者」の主役を降りた勝新太郎の逸話などを収めたコラム「戦国探検隊レポート」での〝脱線ぶり〟も読みどころ。
■桂竹丸(かつら・たけまる) 落語家。1957年鹿児島県生まれ、67歳。76年駒澤大学に入学、落語くらぶに所属。80年「お笑いスター誕生」(日本テレビ系)に出場、5週勝ち抜き銀賞獲得。81年桂米丸に入門。85年に二つ目。91年国立演芸場花形演芸会銀賞とNHK新人演芸大賞を受賞。99年真打ち昇進。2019年日本民間放送連盟賞ラジオ生ワイド番組部門優秀賞受賞。歴史物の創作落語を得意とし、20年に自作「明智光秀伝」で文化庁芸術祭賞大衆芸能部門優秀賞を受賞。タイの大学でタイ語の落語公演などを行い、タイでの落語人気拡大にも注力する。
取材・高山和久
撮影・酒巻俊介
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