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日本の解き方 「年収103万円の壁」撤廃、7~8兆円減収の試算も〝財源はある〟 自然増収、外為特会や国債費も使えるが補正予算に盛り込まれず

zakzak by夕刊フジ / 2024年11月28日 6時30分

財務省の外観(夕刊フジ)

「年収103万円の壁」の撤廃をめぐっては、「178万円」まで引き上げた場合、7兆~8兆円の減収になるとの試算もあり、地方自治体からも不満の声が相次いでいる。

財源問題について、本コラムでは「名目成長4~5%が達成できれば自然増収で賄える。それまで増収がなくても外国為替資金特別会計(外為特会)や国債費などでも捻出できるので、財源問題はない」としているが、より詳しく解説しよう。

まず自然増収の部分であるが、今の経済状況を考えると、かなり期待できる。政府の公表するGDPギャップ(潜在的な供給力と実際の需要の差)は、今年4~6月期でマイナス0・6%である。これは、供給の天井を低く見積もっているためで、筆者の試算では1・7%程度、10兆円程度ある。

ここで7兆~8兆円程度の減税策を行えば、ほぼGDPギャップはゼロになるので、インフレ率は2~3%程度、名目経済成長は5%程度が安定的に見込まれる。これは理想的な経済状況だ。名目国内総生産(GDP)が1%変化したときに税収が何%変化するかを示す「税収弾性値」は「2」程度としても、税収増は7兆円程度になり、ほぼ減収額に見合う。

政府の試算では、経済状況の好転による税収増を見込んでいない。その理由は「不確かであるため」だという。減税は、民間企業でいえば値下げに相当する。値下げは減収効果があるのと同時に、需要増になれば増収効果もある。うまいタイミングで行えば、増収が減収を上回ることも多いが、政府の試算では後者を無視する。

逆に、増税では単純に税収増になると計算するので、増税はしばしば行われるが減税はめったに行われない。

減税による効果がすぐに出ない場合に備えて、筆者は外為特会や国債費での対応を挙げている。外為特会は、もともとは昨今の円安による含み益が数十兆円もあるのが基本事実だ。中期債のドル債を資産としており、含み益は、ドル債の償還・ロールオーバー(乗り換え)などの際に出てくるので、含み益を無理に実現させなくても、毎年2兆円程度は絞り出せる。

国債費については、2024年度予算で国債費のうち債務償還費が16・9兆円あるが、これがなくても債務償還には困らない。借換債の発行でしのげるからだ。かつて債務償還費なしで予算を組んだことも数多くある。また。国債費のうち利払費は9・6兆円あるが、国債費を計算する際に仮置きする「予算積算金利」を1%程度高めに見積もっており、1兆円程度は不要になる。これも財源になる。これらの財源は、補正予算を組めば、財源化できる。

今回、景気対策が行われ、その裏付けとなる補正予算案が11月28日召集の臨時国会で出される。国民に関心の高い基礎控除等を現行の103万円から178万円に引き上げる減税案は盛り込まれず、来年度税制改正の中で協議されることとなった。今回の景気対策に盛り込まれていれば、補正予算と税法改正が今度の臨時国会で手当てされていたはずだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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