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久住昌之 するりベント酒 典型的「中華料理全部弁当」で、満腹 中華料理の一品・一皿の量が多い弱点も克服、感じた〝地元の人に長く愛されてきた味〟

zakzak by夕刊フジ / 2024年12月8日 10時0分

(夕刊フジ)

福岡県春日市という街で講演を頼まれた。

「講演」というと、何か立派なことを話すみたいだが、ボクは全国を街歩きして何か食べたことを、ボクが撮った現地写真をプロジェクターで見せながら話すだけだ。

ところが自分で言うのもなんだが、これが意外にウケるのだ。ボクは面白かったのだが、みんな面白いだろうか?と思って話すのだが、御来場の老若男女の皆さん、かなり笑ってくださる。

で、今回の春日市講演の本番前に控室ででた弁当がこれ。

蓋を開けたらびっくりの正統中華弁当。

こういう弁当久しぶり。見るからに中華。見えるおかずはみんなが知ってる中華料理のスタンダードメニューのオンパレード。

黒胡麻のかかったごはんの右にエビチリ。その隣は青椒肉絲だ。

左上は酢豚だろう。その横の漬物はなんだろう、でも絶対に中華の漬物である。

右に行って春巻き。鶏の唐揚げ。カボチャとナスとレンコンの揚げ物。これは天ぷらっぽいが、やっぱり衣が日本の天ぷらと違う。そして胡麻団子。

漬物以外、料理名を全部すらすらと言えた。しかし、これらの料理が一堂に会した食事をしたことがあるだろうか。おそらくボクはない。

講演前だからアルコールは口にしないが、軽くビールで乾杯してから食べたいような弁当だ。

まずはエビチリを食べた。海老、プリプリ。ほとんど辛くない。このエビチリ、自分から頼んだことはない。でもこうして食べると、おいしい。人気なのがわかる。でもボクは一皿いらない。これくらいで十分。

そう、中華料理の弱点は一品、一皿の量が多いことだ。だから円卓の中華料理を食べに行くなら、最低3人以上で行きたい。だからなかなか行けない。

この少量の青椒肉絲もありがたい。これがまたうまい。白いごはんに合う。そしてその白いごはんがおいしい。

次はやっぱり酢豚だろう。豚肉がデカイ。しっかりしている。この豚の見応えとトロミが酢豚の醍醐味だ。噛み締める充実感。ほのかな甘酸っぱさ。酢豚の中のニンジンと玉ねぎも大好きだ。

いやぁ、いいなあ。小さな春巻きをひと齧りする。まだパリパリっとしている。ミニ春巻きも嬉しい。

だがやっぱり全体に油が多い。なんでも温めて食べる中華料理だから仕方ないが。

そこで唐揚げにレモンを搾りかけてみる。

……ほーら。思った通りだ。爽やかになるじゃないか。漬物をちょっと食べてみる。細かく刻んだザーサイ的なもので、悪くない。というか高菜的な感じもあるので、めしに合う。

いやー、この弁当かなりだ。なんという弁当屋のものか聞くと、地元の人なら誰でも知っている老舗の大きな中華料理店「一品香(イイピンシャン)」の弁当だった。

うーん、そうかさすが。そういう感じがする。そういう感じって、つまり地元の人に長く愛されてきた中華料理店のような安定感のある味というか。

ひと通り食べて、エビチリに戻ると、これが確かにほか弁なんかのそれとは別世界の(比べるのも双方に悪いけど)料理だ。

ミネラルウォーターで食べても十分にうまい。お腹いっぱいになって、講演に向かった。いつか店にも行ってみたい。行くなら5~6人で。

(マンガ家、ミュージシャン、久住昌之)

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