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八木秀次 突破する日本 〝民主主義国家の普遍的価値〟日本が共有・理解できない理由 安倍元首相が言った「台湾有事は日本有事」の真意

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月17日 15時0分

「民主主義国家の普遍的価値」が自覚されるようになったのは比較的最近のことだ。日本では第2次安倍晋三政権以降と言ってよい。中国やロシアなどの権威主義国家が軍事的に台頭し、領土的野心を隠さなくなったことで、民主主義国家は存立価値を自覚的に認識し、結束して対応するようになった。

安倍元首相が提唱した「自由で開かれたインド・太平洋」は別々のものと考えられてきたインド洋と太平洋を一体と捉え、「自由」「民主主義」「法の支配」「基本的人権の尊重」という普遍的価値に支配されるべきとする戦略構想だ。

日本、米国、オーストラリア、インドによる戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」も同じ視点に立つ。とりわけ、インドを民主主義国家の側に引き付け、権威主義国家の側に行かせないための戦略でもある。

このような民主主義国家の普遍的価値についての理解は、日本でも十分とは言えない。長崎市が平和祈念式典からイスラエルを排除する事態が起きたのもそのためだ。

理解が十分でない理由は、最近提唱されるようになったことに加え、日本には伝統的に欧米との間に対立軸を設ける傾向があることだ。

戦前は第一次世界大戦の戦勝国となり、国際連盟の常任理事国となったものの、その後、「東洋」対「西洋」の対立軸を設けた。英米と価値を共有すべきだったが、「東洋」としての価値を追求し、最後は今日で言う権威主義国家のドイツ、イタリアと同盟を結んで第二次世界大戦に突入して敗れた。国家戦略の失敗だ。

戦後は東西冷戦の中で、欧米など自由主義国家と価値を共有したが、米国の占領政策を嫌悪する保守派にも、共産主義国家にシンパシーを持つ左派にも「米国何するものぞ」との気分が残った。民主主義国家の普遍的価値を「アメリカニズム」と呼んで忌避する傾向もある。

しかし、普遍的価値は日本の伝統思想の中で十分消化できるものであり、必ずしも「アメリカニズム」ではない。むしろ日本が先頭に立ってその意義を国際社会に説いていく立場にある。安倍氏の「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」はそうだった。

安倍氏は「台湾有事は日本有事」とも言った。単に中国が台湾に侵攻すれば、日本も巻き込まれて有事になるということではない。台湾は民主主義国家の普遍的価値を共有する事実上の国家だ。その主権を踏みにじることは民主主義国家の価値の否定であり、その意味で日本も人ごとではないという趣旨だ。

大きな世界戦略の中に位置付けられた発想と理解すべきものだ。

■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院政治学研究科博士後期課程研究指導認定退学。専攻は憲法学。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学教授。山本七平賞選考委員など。安倍・菅内閣で首相諮問機関・教育再生実行会議の有識者委員を務めた。法務省・法制審議会民法(相続関係)部会委員、フジテレビジョン番組審議委員も歴任。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)など多数。

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