1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

列島エイリアンズ 外国人特別料金編(1)民間施設の「二重価格」に正当性はあるか オーバーツーリズム解消の切り札も…差別につながりかねないの指摘

zakzak by夕刊フジ / 2024年12月25日 6時30分

日本では珍しいが、海外の飲食店での二重価格はままある(夕刊フジ)

政府観光局によると、今年1月から11月までの訪日外国人旅行者は累計で約3337万人となり、過去最多だったパンデミック前の2019年の年間累計をすでに上回った。

その一方で盛り上がっているのが、インバウンド関連業界で導入が検討されている訪日外国人向け二重価格に関する議論だ。

訪日外国人に対し、通常価格よりも高い「外国人価格」を請求することは、社会問題となっているオーバーツーリズムを抑制する効果があるとする声があるものの、外国人差別につながりかねないという指摘もある。

海外では、遺跡や美術館のほか、公共施設の入場料で、二重価格が設定されている国や地域は少なくない。インドのアジャンタ遺跡、トルコのトプカプ宮殿、タイのエメラルド寺院など筆者も旅行者として、外国人価格を課せられた記憶は事欠かない。もちろんいい気はしなかったのだが、かといって差別されていると感じたことはない。

それらの施設は当地の国民の共有財産であり、整備やメンテナンスには税金が投入されている。しかし、ヨソからきた外国人は、施設の所有者の一部でもなければ税金も払っていない。だから国民よりも高い入場料を支払うということは理にかなっているからだ。

日本では、世界遺産の姫路城(兵庫県姫路市)が、2026年春以降、入城料を二重価格とし、「市民以外」に「市民」の2~3倍の料金を課す予定だという。

当初、姫路市では訪日外国人を対象とした外国人価格を設定する意向を示していた。しかし、「外国人差別」などの批判が出たこともあり、市民か否かで分ける方針に固まったようだ。

姫路城の維持管理のコストは姫路市の税金で賄われているため、市民が安く入城できるのは納得がいく。しかし、姫路城自体は国有であり、国民共有の財産であることを考えると、国民(及び国内居住者)か否かで分けていたとしても、外国人差別という批判には当たらなかったのではないだろうか。

民間のホテルや飲食店でも、外国人価格を設定する動きが広がっている。これに関しては、国民の共有財産ではなく、基本的には税金も投入されていない施設であるため、二重価格の正当性を問われかねない。

次週はこの問題について考察してみたい。 =つづく

外国人材の受け入れ拡大や訪日旅行ブームにより、急速に多国籍化が進むニッポン。外国人犯罪が増加する一方で、排外的な言説の横行など種々の摩擦も起きている。「多文化共生」は聞くも白々しく、欧米の移民国家のように「人種のるつぼ」の形成に向かう様子もない。むしろ日本の中に出自ごとの「異邦」が無数に形成され、それぞれがその境界の中で生きているイメージだ。しかしそれは日本人も同じこと。境界の向こうでは、われわれもまた異邦人(エイリアンズ)なのだ。

■奥窪優木(おくくぼ・ゆうき) 1980年、愛媛県出身。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国で現地取材。2008年に帰国後、「国家の政策や国際的事象が、末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに取材活動。16年「週刊SPA!」で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論され、健康保険法等の改正につながった。新著「転売ヤー 闇の経済学」(新潮社)が話題。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください