森永康平の経済闘論 石破政権で高まる「ダブル引き締め」懸念 来年6月に金融所得課税の強化や消費税、法人税の引き上げ明示
zakzak by夕刊フジ / 2024年10月3日 11時0分
自民党総裁選が9月27日に行われ、決選投票の結果、石破茂元幹事長が、1回目の投票では1位だった高市早苗経済安保相を逆転して、新しい総裁に選出された。
総裁選の結果が報じられると市場では日経平均先物が一時、2000円以上も値を下げて3万8000円台を割り込み、ドル円相場は一時、1ドル=142円台まで円高が進んだ。25日頃から株式市場では日経平均が上昇し、為替市場では円安が進行していたが、総裁選の結果を受けて株、為替ともに元通りの水準に戻ったかたちとなり、「高市トレード」による株高円安を「石破ショック」が全て打ち消したと表現してもよいだろう。
現時点では石破政権がどのような経済政策を打ち出していくかは分からないため、今後も株安円高傾向が続くのかは不透明だ。しかし、総裁選告示前における石破氏の経済政策に関する発言を見ていると、財政・金融ともに引き締め志向が強いことが分かる。
推薦人を集める過程で石破氏の経済政策とは意見が異なる議員の力も借りていることから、総裁選告示後は岸田文雄政権の取り組みを引き継ぐことや、足元の個人消費の低迷に対して財政出動の必要性を説いていたが、前述の通り、根底には財政・金融について「ダブル引き締め」志向があることは忘れてはいけない。
25日に経済協力開発機構(OECD)が発表した経済見通しにおいて、主要国のなかでは日本は例外的に2024年の経済成長率の見通しが下方修正され、マイナス成長が予想されている。このような経済環境下において、国民の負担が大きくなるような政策をとれば、当然国民からの反発は必至であることから、目先は財政政策での引き締め策は控える可能性は高い。
しかし、植田和男総裁の日銀が利上げ姿勢を維持しているなか、金融政策では追加利上げという形で早々に引き締めることになろう。
まずは金融政策から引き締めていくなかで、金利が上昇することによって国債発行における利払い費の負担が上昇することから、来年の6月の骨太の方針ではより厳格化したプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を掲げ、告示前に触れた金融所得課税の強化や消費税、法人税の引き上げなどの方向性を明示するのではなかろうか。
現時点ではあまり明るい未来を想像できないということが偽らざる本音だ。
■森永康平(もりなが こうへい) 経済アナリスト。1985年生まれ、運用会社や証券会社で日本の中小型株のアナリストや新興国市場のストラテジストを担当。金融教育ベンチャーのマネネを創業し、CEOを務める。アマチュアで格闘技の試合にも出場している。著書に父、森永卓郎氏との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など。
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