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ニュース裏表 峯村健司 ネット上で「反日」拡大も 不適切投稿即削除の中国政府は〝黙認〟男児刺殺事件は「日本」標的の可能性、SNS上で煽られたか

zakzak by夕刊フジ / 2024年9月28日 10時0分

中国広東省深圳市で18日朝、日本人学校に登校中の男子児童(10)が男に刺された。現地の当局者によると、男は鋭利な刃物で男児の腹部を複数回刺し、刃物は肝臓を貫通した。男児は近くの病院に運ばれて集中治療室(ICU)で治療を受けたが、出血多量で19日未明に死亡した。

深圳市は20日、地元警察の捜査結果を発表した。男は44歳の漢族で定職はなく、2019年に公共の秩序を乱す事件を起こすなど、複数の前科があるという。男は調べに対し、男児を刺したことを認めている。警察は「単独犯で偶発的な事件」だったと強調し、日本人を狙った事件ではないことを示唆した。

しかし、「日本」をターゲットにした可能性が高いと筆者はみている。

事件が起きた18日は93年前、満洲(現在の中国東北部)の柳条湖付近(遼寧省瀋陽市近郊)で、関東軍が南満洲鉄道の線路を爆破する事件が起きた。中国では「国辱の日」とされ、反日感情が最も高まる日だからだ。

さらに最近、中国のSNS上では、日本人への差別的な投稿が増えている。特に日本人学校には「日本政府のスパイ養成学校」や「租界」などと根拠のない書き込みが目立つ。インフルエンサーが日本人学校の校舎内や登下校する児童を盗撮する動画が人気を集めたりもしている。

こうした投稿をうのみにした中国人による、各地の日本人学校への投石などの嫌がらせも相次いでいる。

中国政府はSNSを厳しく監視しており、不適切な投稿はすぐ削除される。にもかかわらず、日本に関する事実無根な書き込みが放置されているのは、中国政府が事実上黙認しているといってもいい。

今年6月には中国江蘇省蘇州で日本人学校のスクールバスが、刃物を持った男に襲われ、日本人親子がけがをする事件が起きている。日本人学校関係者が相次いで襲撃される事件が起きていることは、SNS上で煽られた言説とは無関係とは言えないだろう。

中国では、2005年と10年、12年と「反日デモ」が起きている。筆者も北京特派員時代、デモ隊に交じって取材したことがある。緊張感はほとんどなく、参加者は大型バスで現場に乗り付けていた。デモ後は「紅包」と呼ばれる赤い袋に入った謝金を受けとっている場面を何度も目撃した。いわば政府が動員した「官製デモ」だったのだ。

今回の事件については、政府が関与していた可能性はほぼないだろう。むしろ江沢民政権が1990年代に始めた「愛国教育」により煽られた反日感情がきっかけになったとみている。それがSNSが触媒となって燃え広がり、政府もコントロールできなくなっているのが現状だろう。

中国において日本人学校を狙った類似の事件が起こる可能性を強く懸念している。日本政府は事件の真相解明を中国政府に求めるとともに、SNS上の反日的な投稿の削除を強く求めるべきだ。

そして、外務省が出す渡航・滞在の「危険情報」についても、中国は現在、新疆ウイグル、チベット両自治区を除き「レベルゼロ」となっている。この危険情報の引き上げも検討するときだ。 (キヤノングローバル戦略研究所主任研究所 峯村健司)

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