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ニュース裏表 田中秀臣 日銀追加利上げは「合理的にあり得ない」選択だった 消費の低迷続き、総需要不足も鮮明 促したのは自民党有力者…官僚たちのやりたい放題

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月6日 6時30分

追加利上げを決めた日銀(夕刊フジ)

日本銀行の政策変更はきわめて非合理的な判断だった。7月31日、政策金利を0・25%に引き上げ、また長期国債買い入れの減額方針を発表した。簡単にいうと金融引き締めを強化した。

だが、日本経済の足元をみると、消費の低迷が続き、経済全体での総需要不足も鮮明である。多くの国民が期待している所得の安定的な拡大が実現できるかどうか、現状は微妙な段階だ。このタイミングでの金融引き締めは、経済合理的にはあり得ない。

日銀は「経済・物価情勢の展望」(いわゆる展望リポート)を公表している。この最新版も今回公表された。そこでは、実質国内総生産(GDP)の見通しが下方修正されている。1月時点での今年度の成長見通しは、プラス1・2%だったが、4月では0・8%、今回は0・6%とどんどん低下している。

経済の失速が鮮明だと見通しているにもかかわらず、展望リポートのシナリオ通りに経済と物価が推移しているので、利上げしても大丈夫だ、というのが日銀の公式の姿勢だ。しかしそのシナリオを毎回、悪い方向に書き換えているのだから、「シナリオ通り」というのは詐欺に等しい言い訳である。

植田和男総裁は「消費は底堅い」と記者会見で発言しているが、これは官僚用語で、その真意は、「消費は今より悪くはならない(良くもならない)」ということだ。だが、利上げをすれば、消費に関わるローンの金利が上がり、また企業の資金調達コストも上昇するだろう。預金金利も上がるが、そのメリットよりもデメリットの方が大きい。当たり前だが、消費が低迷しているときに、さらにそれを押し下げることをしているからだ。

相変わらず実質賃金のマイナス傾向は続く。雇用でも失業者の増加が目立つようになってきた。定額減税や春闘などの賃上げ効果が、本当に消費の拡大に結びつくのか、しかもそれが長期間持続するのか、現状では不透明である。利上げはあり得ない選択だった。

だが、河野太郎デジタル相や茂木敏充自民党幹事長ら有力者から「円安阻止のための利上げ」や「金融政策の正常化」を求めるトンデモ発言が続いた。自民党総裁選などの政治事情が、今回の日銀の政策変更を促したのかもしれない。そもそも衆院選をいまやれば与党の大敗はほぼ確実だ。

政治情勢が不透明化する前に、いましか利上げのタイミングはない、と判断したのだろう。だが、それは国民経済のためではなく、単に利上げが自己目的化しているだけにすぎない。他方で、神田眞人前財務官を内閣官房参与に任命するなど、岸田文雄政権の財務省依存も鮮明になっている。日銀といい財務省といい、官僚たちのやりたい放題である。 (上武大学教授)

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