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八木秀次 突破する日本 長崎市はロシアとイスラエルを同列視するな 「原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」招待見送り、民主主義国家の普遍的価値共有拒否か

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月15日 11時0分

エマニュエル米国大使は長崎市の対応を批判した(夕刊フジ)

長崎市が9日に開催した「長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」にイスラエルの招待を見送ったことから、G7(先進7カ国)のうち、日本を除く6カ国(米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ)とEU(欧州連合)の大使と臨時大使が抗議の意味で欠席した問題は、今後に禍根を残すだろう。

9日午前、米国と英国、そしてイスラエルの駐日大使は長崎市の式典出席に代えて、東京・芝公園の増上寺で開かれた「長崎原爆殉難者追悼会」に出席した。

朝日新聞デジタルの記事(9日)によると、ラーム・エマニュエル米国大使は出席後、「長崎市長にもレターで伝えたが、岸田文雄首相も参列していることからも、(長崎市側が主張する)安全上の理由ではなく、政治的な決断だと思う」と、改めて長崎市の対応を批判した。

そして、「(同様に招待されなかった)ロシアは侵略した国で、イスラエルは(イスラム組織ハマスの)越境攻撃の犠牲になった国だ。それを同列に扱うのは、私が出席することによって政治的に受け入れてしまうことになる。良心にかけてそれは出来なかった」と欠席の理由を述べた。

エマニュエル氏はリベラルな思想の持ち主で、LGBT問題などでは日本への内政干渉まがいの行為をした人物だが、今回は同氏の主張が正しい。

ロシアはウラジミール・プーチン大統領率いる権威主義的国家だ。ウクライナに一方的に侵攻し、その主権を踏みにじっている。ウクライナは民主主義国家だ。その主権を踏みにじることは、民主主義国家の普遍的価値である「自由」「民主主義」「法の支配」「基本的人権の尊重」を否定することに等しい。だから、民主主義国家は結束してウクライナを支援し、ロシアを非難してきた。

一方、ベンヤミン・ネタニヤフ首相のイスラエルは民主主義国家だ。普遍的価値観を共有している。そのイスラエルがハマスの攻撃を受けて自衛の措置としてパレスチナ自治区のガザ地区を攻撃した。

ハマスの背景には、イランの存在があるとされる。イランも権威主義国家だ。イスラエルの反撃の程度やガザ地区の被害の程度の問題は論じられてよいが、それに捉われるあまり、イスラエルをロシアと同列視して式典から排除することは「木を見て森を見ず」の大局観の欠如に等しい。

長崎市はパレスチナの代表は招待している。どう考えても長崎市は民主主義国家の普遍的価値の共有を拒否しようとしたようにしか見えない。「反ユダヤ主義」とも映った。

制止できなかった日本政府も同罪だ。日本だけが別の価値観に立っているように見える。これは小さな問題ではない。国家としての存立価値の問題だ。

■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院政治学研究科博士後期課程研究指導認定退学。専攻は憲法学。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学教授。山本七平賞選考委員など。安倍・菅内閣で首相諮問機関・教育再生実行会議の有識者委員を務めた。法務省・法制審議会民法(相続関係)部会委員、フジテレビジョン番組審議委員も歴任。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)など多数。

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