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お金は知っている 〝利上げパニック〟の謎を解く 日銀政策は「グローバル金融市場激震」の源だ 日本発の世界同時株安がリーマンショックを想起

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月9日 6時30分

(夕刊フジ)

日銀の追加利上げが8月5日、日本株の暴落を招き、瞬(またた)く間に世界に飛び火した。日銀政策はグローバル金融市場激震の源だ。なぜか。

グラフは日銀政策金利と日米の株価の推移である。2000年8月に日銀がゼロ金利政策を解除すると、ドットコム・バブル崩壊へとつながった。当時のグリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長はスタッフたちを集め、バブルの判定基準を研究させたが、結論は「崩壊するまではバブルと判断できない」だった。バブル防止策をあきらめるかわりに、バブル崩壊が実体景気に及ぼす衝撃を最小限にとどめるのが金融政策のキモだとみなした。以来、これがFRBの基本政策である。

対照的に、日銀は円安・物価上昇阻止と銀行健全経営最重視路線に執着する。需要不足とデフレ圧力が深刻化していても、無視する。銀行収益増を生む利ざや拡大のための利上げを優先する。今回の植田和男総裁の日銀のマイナス金利解除や追加利上げがまさにそれだ。

話をグラフに戻すと、08年9月のリーマンショックも06年7月の日銀利上げが導火線になったとみることができる。2000年当時と同様、日本国内外の投資ファンドがゼロ金利の円資金を調達、米国株などドル資産に投資する「キャリートレード」が盛んになっていた。このプロセスで円安になり、円建ての借金をしていればさらに収益を挙げられる。ところが、日銀が利上げに転じると、すべてが逆に回り出す。

投資ファンドは円建ての債務を返済しようと、米国株などドル資産、日本株など円資産の売却に走る。日米の株価が下落すると同時に、ドルは売られ、円が一斉に買われるので、円高・ドル安が進むわけである。リーマン・ショックはこの流れの果てと言える。

その後、2013年3月からは黒田東彦総裁(当時)の日銀が異次元金融緩和政策を打ち出し、実質ゼロ金利の円資金を大量発行するにいたり、キャリートレードの規模が膨張していく。日銀が増発する資金相当額がニューヨークなど国際金融市場に流れ込み、米国株はもちろん日本株、さらに中国を含め世界的な株高が進む。黒田日銀は16年2月には政策金利をマイナスにまで下げ、日本マネーがさらに海外に流れ込む。22年3月からはFRBが大幅利上げを繰り出すので、日米金利差が拡大し、円安が急進行していく。

日銀は23年4月に植田体制になり、24年3月には大規模緩和を打ち切り、7月末に政策金利を0・25%とし、さらに利上げを重ねる方針を示した。その結果が日本発の世界同時株安である。このパターンはリーマンショックを思い起こさせる。

留意すべきは、リーマン後、米国景気は大幅な金融緩和で事無きを得たのに対し、日本は金融無策のために深刻なデフレ不況に見舞われたことだ。円高誘導にこだわり、デフレを無視する植田日銀は同じ失敗を繰り返す恐れが十分ある。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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