ウクライナ、ロシア西部クルスク州へ「越境攻撃」の目的 渡部悦和氏「米大統領選後の停戦交渉での交換条件狙いもあるのでは」
zakzak by夕刊フジ / 2024年8月13日 15時1分
これに対し、ウクライナ軍は要衝を重点的に防衛し、ロシア軍を消耗させ反撃に備えてきた。今月には西側諸国から届いた米国製戦闘機F16の第1陣が運用を開始しており、課題だった防空体制の強化が見え始めているが、これまでの劣勢を覆すまでには至っていない。
英BBC(日本語版)は8日、解説記事で「ウクライナが戦場で抱える最大の問題はマンパワーだ」として、「ウクライナ兵をロシアに送り込むこと自体、言ってみれば、状況にそぐわない動きだと見る向きもあるだろう」と指摘した。
ウクライナの越境攻撃の目的を専門家はどうみるか。
元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は「ロシア軍に主導権を握られた状況が数カ月も続くなか、一方的に攻撃をかけられるだけでなく、ロシア領内を戦場にすることで、ウクライナ国民、軍の士気を高める目的があったのではないか。ウクライナ軍は東部戦線で劣勢が続いてきた。2カ月間も越境攻撃の準備をしてきたというが、機会を狙って最もロシア軍が脆弱(ぜいじゃく)になっていたクルスク州に戦力を投入し、陽動作戦をとったのではないか」とみる。
米大統領選を見据えた動きとの可能性もある。トランプ氏が米大統領に返り咲いた場合、ロシアとウクライナ双方に交渉を促して、自身が掲げる「早期停戦実現」を図るとの観測が出ているからだ。
渡部氏は「トランプ氏だけでなく、民主党のカマラ・ハリス副大統領が当選した場合でも、停戦交渉がいつ始まってもおかしくない。クリミア半島が象徴的だが、ロシア軍に大部分を握られて現状では奪還が難しい。停戦交渉に持ち込まれた場合、少しでも有利に進めるためにどこかロシア領を『バーター』(交換条件)として持っておくという狙いもあるのではないか。ただ、ロシア領内での作戦行動を継続すれば損害をこうむる可能性があり、ウクライナ軍が今後、どのような選択肢をとるかが課題だ」と語った。
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