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マネー秘宝館 〝分業の国〟米国だからこそ驚く「打って・走って・投げて」大谷翔平の活躍 ビジネスマンも製造業からサービス業へOSの転換を

zakzak by夕刊フジ / 2024年9月4日 6時30分

大谷翔平選手、40本塁打&40盗塁達成(8月23日時点)のニュース。彼の活躍にはわれわれ日本人より、アメリカ人の方が興奮しているようです。その理由はアメリカが「分業の国」だからではないでしょうか。

20世紀のはじめ、アメリカは分業によって大量生産・高品質のモノづくりを成し遂げました。その代表が自動車産業です。ベルトコンベヤー方式の工場で「お前はこの作業をやれ」と命じられた作業をミスなく無駄なくやり続ける。これによって効率的な自動車生産を成し遂げました。個の力の総和を全体として大きく花開かせる――その「分業」発想は、アメリカ人の愛する野球やアメリカンフットボールにも持ち込まれました。そこではしっかりとした「攻撃と守備の分離」、そして「個人レベルの役割分担」が行われたのです。

そのような分業発想を超越した大谷選手の打って・走って・投げての活躍がアメリカ人を驚愕させたのはうなずけるところ。

彼の活躍を感心して見ている場合ではありません。そろそろ私たちビジネスマンも「分業の先」を考えておいた方がよさそうです。

というもの、アメリカ製造業が成し遂げた「生活に必要な財の効率的生産」はすでに限界に達しています。いまやモノあまりで片付けや整理整頓が流行る世の中。20世紀前半に製造業を牽引した食料・家電・生活関連資材・自動車などは、おしなべて低価格競争に向かっています。ここでイノベーションを起こすのは容易ではありません。

一方、それに代わって元気の良さが目立つのがサービス・コンテンツ系の産業です。モノではなくコト、情報や経験を提供するこれら産業の存在感がどんどん大きくなっています。すでに日本の重厚長大企業の多くが「サービス業シフト」を宣言しています。

しかしながら、「モノづくりからサービス・コンテンツへのシフト」は容易ではありません。多くの担当者が苦しんでいるのを目にしました。製造業とサービス業ではそもそものOS(オペレーティング・システム)が異なるのです。

大企業・製造業OSでは「与えられた業務をこなす」まじめさが求められます。出勤時間や行動については定められたルールを守り、上司から言われた仕事を期限通りにやり遂げるべく集中すること。真面目さと集中こそが製造業OSのキモでありました。

これに対してサービス・コンテンツ産業OSは「感じの良さ・おもしろさ」がとにかく大切です。それを生み出すためにはまじめさよりも好奇心。ひとつのことに集中するのではなく、外の世界にどんどん越境してキョロキョロ・ウロウロすること。それが秘訣であるように思うのです。

製造業的な分業発想の終わり、それは私たちにもOSの転換を求めます。ぜひ好奇心全開にいろんな場所に首を突っ込みましょう。大谷選手を見てください。「役割を果たす」のではなく、心から野球を楽しんでいそうじゃないですか!

■田中靖浩(たなか・やすひろ) 公認会計士、作家。三重県四日市市出身。早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティング会社勤務を経て独立開業。会計・経営・歴史分野の執筆・講師、経営コンサルティングなど堅めの仕事から、落語家・講談師との共演、絵本・児童書を手掛けるなど幅広くポップに活躍中。「会計の世界史」(日本経済新聞出版社)などヒット作多数。

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