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日本の解き方 戦争のリスクをどう減らす? 重要性増す「同盟」と「軍事力」 日本でも防衛費増額は必然 負担なしでは平和と経済繁栄はない

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月16日 11時0分

大勢の参拝客で混雑する靖国神社=14日午後、東京都千代田区(夕刊フジ)

8月15日は「終戦の日」だ。これには多くの日本人は疑問を持たないだろうが、世界では必ずしもそうではない。

筆者には苦い経験がある。米国に国際関係論で留学した際、「第二次世界大戦がいつ終わったか」が議論になった。筆者は「8月15日」と言ったが、他国の人は「9月2日」だった。その理由は、東京湾に停泊したミズーリ艦上で日本政府がポツダム宣言の履行などを定めた降伏文書に調印した日だからだ。日本人の筆者に同調する人はいなかった。

さらにショックだったのは、ロシア人が、ソ連の北方四島への侵攻は「終戦日」である9月2日以前だと正当化したことだ。筆者が「その行為は当時有効だった日ソ中立条約違反だ」と反論しても、孤立無援だった。

ソ連は連合国の一員であり、連合軍は勝利したので、勝者の論理に反する者はいない。ドサクサ紛れのどんな不法行為でも、実際に占領した者の意見が通るというのが国際世論なのだ。これが北方領土がまだ返ってこない根本理由でもある。

将来のことを考えると、戦争はいかなる理由でもいけない。国際政治学では平和達成について、①同盟と②軍事力から説明する「リアリズム」の立場と、③民主化④経済依存度⑤国際機関加入から説明する「リベラリズム」の立場がある。

なお、③~⑤は哲学者のカントが唱えていたことから、「カントの三角形」といわれている。

この両者の立場は対立しない。政治学者のブルース・ラセット氏とジョン・オニール氏は、戦争リスクの減少率について実証分析した。それによれば、①同盟関係を結ぶことで40%、②相対的な軍事力が一定割合増すことで36%、③民主主義の程度が一定割合増すことで33%、④経済的依存関係が一定割合増加することで43%、⑤国際機関加入が一定割合増加することで24%、それぞれ戦争のリスクが減るという。

日本の周辺には、③の民主化がなされていない中国と北朝鮮がある。しかも、米国と中国の分断が進んでいることで、④の経済依存度は高まる気配はないし、経済安全保障の考え方が有力になっている。

まして、⑤の国際機関は、国連を含めて、もう頼りにならない。そうであれば、①の同盟と②の軍事力を強化するしか、戦争のリスクを少なくする方法はないといえる。

古代ローマの時代から、「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ」という格言もあった。つまり、十分な戦闘能力を備えることで、他国から攻撃されることを防ぐという考え方だ。平和を守るためには、平和を脅かされないだけの軍事力が必要であり、その負担なしでは、平和と経済繁栄はおぼつかない。

ロシアがウクライナに侵攻した2022年以降、①の同盟と②の軍事力を強化することの重要性が世界でも認識されるようになった。

日本でも防衛費増額の議論がようやく出てきたことも必然であり、これが有事リスクを減らすことになる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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