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BOOK 作家・蝉谷めぐ実「良い小説を書くためなら私は何でもする」 価値観が入り混じった江戸時代の歌舞伎が舞台、扇五郎に狂われた人たち

zakzak by夕刊フジ / 2024年12月14日 10時0分

――文章に独特のリズムがある。これも江戸時代へのこだわり

「文章の流れや拍子はすごく気にしますね。というのも私が書きたいのは『江戸の空気感』や『息遣い』が感じられる小説なんです。江戸の人間と現在では話している言葉も違う。だから、当時の様子を知るために落語や講談を参考にしたりもします。もちろん(独特のリズム感があるがゆえに)読みづらさがあることも分かってはいるのですが、私としては、『江戸』にこだわりたい気持ちの方が強いです」

――では「江戸」の魅力はどこに

「江戸時代の歌舞伎を勉強したことをきっかけにいろんな歴史・時代小説を読み始め、その時代特有の倫理観、価値観があることを知りました。特に文化・文政期はそれまで上方中心だった文化がどんどん江戸に流れていった時代で、いろんな人間の価値観が入り混じっている。そういった空気感を文章で表現したいんです。東京で生まれ、育った人間ではない(蝉谷さんは大阪出身)からこそ、気付く『江戸の良さ』もあると信じています」

――これからも歴史時代小説を

「デビュー前は歴史・時代小説はハードルが高いと感じていて、現代小説を書いていました。でも(新人賞の)最終候補になんとか残れても、受賞には届かない。じゃあ、もういっそ自分の好きなもの(江戸歌舞伎)を好きなように書こうと決めたんです。歌舞伎のテーマ自体は今作でひと区切りですが、(江戸歌舞伎の世界は)掘れば掘るほど面白い。いずれそこへ戻ってゆくことになると思います」

――本が売れない時代。将来の展望は

「今の時代は『コスパ』が大事。映像も3倍速で見る人がいると聞きます。でも、動画と小説は同じ娯楽でも受け取り方が違って、見る(読む)方の頭の働かせ方も違います。人間は常に娯楽を求め続ける生き物だから、活字は今後も無くならないと思うし、逆にその『違い』こそが武器になるかもしれません」

江戸歌舞伎の花形役者、今村扇五郎は〝つっころばし〟と呼ばれる和事の芸風で高い人気を得ている。その芸を極めるためには、まったく遠慮会釈なし、何でもやる。その扇五郎に無条件の献身を続ける女房、お栄をはじめとした周囲の人間は惑わされ、人生を狂わされてゆく。犬殺しからついには、若手役者の殺人の嫌疑まで掛けられてしまった扇五郎の真の狙いとは?

せみたに・めぐみ 1992年、大阪府出身、32歳。早稲田大学文学部卒。2020年『化け者心中』で小説野生時代新人賞を受賞し、作家デビュー。同作は日本歴史時代作家協会賞(新人賞)、中山義秀文学賞も受賞した。『おんなの女房』で野村胡堂文学賞、吉川英治文学新人賞を受賞。24年『万両役者の扇』で山田風太郎賞を受賞した。歴史・時代小説のジャンルで活躍中。

取 材・梓 勇 生/撮 影・相川直輝/レイアウト・加藤洋介

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