1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

前立腺肥大症・最新治療 「前立腺肥大症」は良性疾患ゆえに高い副作用の危険性 薬物治療で注意すべきこと 「尿のことは泌尿器科へ」を意識した受診行動を

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月1日 15時30分

阿南医師(夕刊フジ)

「前立腺肥大症」と診断されたときの治療法について見ていこう。

治療の選択肢のうち「薬物治療」について、四谷メディカルキューブ泌尿器科科長の阿南剛医師=写真=はこう解説する。

「検査の結果、前立腺肥大症と診断されても、いきなり手術に進むのはまれで、治療ガイドラインでも薬物治療からスタートすることが推奨されています」

基本的にはまず薬物治療を行って、効果が実感できれば継続し、効果が出ないときに手術を検討することになる。

しかし、実を言うと、このあたりの判断には地域間や施設間での格差があるのも事実だ。手術設備のある医療機関であれば早い段階で手術に移行できるが、手術設備を持たないクリニックや、近くに前立腺肥大症の手術に積極的な病院が無い医療過疎地域などの場合、薬物治療を引き延ばすケースもなくはない。

これが「がん」ならガイドライン通りに進めるところだが、良性疾患である前立腺肥大症は、医療提供側の事情が反映されやすいのだ。

前立腺肥大症に使われる薬には、α1受容体遮断薬(タムスロシン、シロドシン、ナフトピジル)やPDE5阻害薬(タダラフィル)、5α還元酵素阻害薬(デュタステリド)など多くの種類があり、効果の出方を見ながら薬を選んでいく。

阿南医師によると、夜間に2回以上トイレに行く人は50歳代で5人に1人、60代は5人に2人、70代だと5人に3人、80代になると5人に4人に増えるという。

「若い頃はバソプレシンという抗利尿作用のあるホルモン物質が夜間に多く分泌され、夜中に尿が濃縮されて尿量が減るので夜間にトイレに行く必要がない。だから朝一番の排尿では、濃縮された真っ黄色の尿が出ます。ところが加齢とともにバソプレシンの夜間の分泌が減ることで、夜間の尿の濃縮力が低下してくる。結果として尿量そのものが増えるので、夜間頻尿になってしまうのです」

この加齢現象は「夜間多尿」と呼ばれ、男女とも起きる。

「ミニリンメルトという男性のみに適用される薬があります。適切な水分摂取制限などの生活指導を受けた上で、夜間多尿のある人が服用すると、夜間の尿量が減るのでトイレのために起きる回数が減る可能性があります。ただ、低ナトリウム血症などの副作用のリスクもあるので使用には慎重さが求められます」

前立腺肥大症や夜間多尿には多くの薬が用意されており、しかも命にかかわることのない良性疾患ということもあって、高血圧や脂質異常など生活習慣病治療のついでに、泌尿器科専門医ではない医師に薬を出してもらっている人も少なくない。

ただし、ここでも注意が必要だ。

排尿障害や夜間多尿などの症状が、どんな原因から起きているのか―を探ることなく薬を使い続ければ副作用の危険性があるし、手術のタイミングを逸する危険性もある。「おしっこのことは泌尿器科医へ」という当たり前のことを、いま一度意識した受診行動を取ってほしい。 (取材・長田昭二) 【あすは「前立腺肥大症の手術療法について」です】

■阿南剛(あなん・ごう) 四谷メディカルキューブ泌尿器科科長。2008年、名古屋市立大学医学部卒業。聖路加国際病院、東北医科薬科大学病院等を経て、22年4月から現職。専門は前立腺肥大症と尿路結石症の内視鏡手術。日本泌尿器科学会専門医・指導医。日本排尿機能学会専門医ほか。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください