昭和歌謡の職人たち 伝説のヒットメーカー列伝 中島みゆき(上)清純さと独特の声の響きに感動 1970年代、若者の間では「君はみゆき派ですか、ユーミン派ですか」
zakzak by夕刊フジ / 2024年12月10日 11時0分
女性シンガー・ソングライターといえば、やはり中島みゆきと松任谷由実か。1970年代、若者の間では「君はみゆき派ですか、ユーミン派ですか」とよく聞かれたものだ。都会的なユーミンと自然派のみゆきという具合に、音楽の趣向の違いで、お友達になれるかどうかが決まる案配だ。
2人は人間の本性である喜怒哀楽、夢と憧れを自分の生活目線で素直に歌という作品で表現している。中島を初めて見たのは73年のテレビ画面。北海道の牧場の柵に腰掛け、ギターを弾きながら歌っていた。清純さと声の響きが独特でマスクも愛らしく、新しいスターの誕生を感じさせた。
入社したばかりの新入社員だった私は感動で言葉がなかった。心を揺さぶられた。日本版ジョーン・バエズの登場ではないかと思えた。
中島みゆきの歌詞は普遍的なテーマが多く、日常の生活の中から感じ取れる心情を、日本語の比喩表現を巧みに使って描いている。
NHK「プロジェクトX」の主題歌「地上の星」は働く人々をテーマにしたものだ。空には星が輝くが、地上にも人知れず立派な仕事に従事する人もいるんだと。人は誰も「唯一無二」の存在だと主張している。この曲はオリコンチャート1位に躍り出た。
彼女の曲には転調も多い。急に映像が切り替わるような刺激があり、聞く側に緊張感が広がる。そして時に歌唱にも非常に細かいビブラートが入る。それは静かに訴えるように響く。
1975年に「アザミ嬢のララバイ」でデビューし、第10回ポピュラーソングコンテストと第6回世界歌謡祭でグランプリを獲得し、同年発売の「時代」はオリコン1位に輝いた。
77年「わかれうた」、81年「悪女」、94年「空と君のあいだに」、2000年「地上の星」と1970年代から2000年代の4年代にわたりシングル1位を獲得している。
そして中島といえば、1989年から始めた独自の創作音楽劇である「夜会」。どこかおちゃめでキュートな女などを演じる。歌あり、芝居あり、舞台装置も見どころ満載のステージなのだ。
2011年の東日本大震災では、多くの被災者が「時代」や「ファイト!」などの楽曲で勇気づけられた。そして、中島の作品は近隣の国でも多くの人々に聴かれている。
中島みゆき(なかじま・みゆき) 1952年2月23日生まれ、72歳。北海道出身。75年にデビュー。他のアーティストへの提供曲が、5つの年代でシングルチャート1位を獲得している。
■篠木雅博(しのき・まさひろ) 株式会社「パイプライン」顧問、日本ゴスペル音楽協会顧問。1950年生まれ。東芝EMI(現ユニバーサルミュージック)で制作ディレクターとして布施明、五木ひろしらを手がけ、椎名林檎らのデビューを仕掛けた。2010年に徳間ジャパンコミュニケーションズ代表取締役社長に就任し、Perfumeらを輩出。17年に退職し現職。
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