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田村秀男 お金は知っている 円安・ドル高が止まらない真の理由 米経常赤字を埋める資金、最大の出し手国が日本 流入額増えるほど円売り・ドル買いが盛んに

zakzak by夕刊フジ / 2024年12月20日 6時30分

(夕刊フジ)

米国ではあとひと月で大統領の座に復帰するトランプ氏が、「MAGA(米国を再び偉大な国にする)」を標榜(ひょうぼう)し、産業競争力を阻害するドル高・相手国通貨安を嫌う。米連邦準備制度理事会(FRB)も利下げ路線を堅持している。日本のほうは日銀が利上げ基調を崩さない。そうであれば、ドル安、円高へと市場が動くはずなのだが、実際にはドルが買われ、円が売られやすい。なぜなのか。

グラフは、海外からの米国への資金純流入(総流入と総流出の差額)と米経常収支赤字の12カ月間合計と、円の対ドル相場の推移である。

注目すべきは円ドル相場と経常赤字、純資金流入の連動ぶりである。経常赤字が年間で4000億ドル前後で比較的安定している2020年ごろまでは円は「1ドル=110~120円」で比較的安定していた。ところが、経常赤字が21年以降、急速に膨らみ始めると、円安・ドル高が止まらなくなった。経常赤字は22年にピークアウトし、今年は縮小速度が速くなっているが、円安・ドル高基調は崩れない。

そこで、海外からの対米資金を見ると、23年からは経常赤字とは遊離して流入が膨らみ続けている。海外資金流入の拡大はドル買いを盛んにするので、ドル相場を押し上げる。

米国は世界最大の純債務国であるのに対し、日本は純債権国である。米国経済は消費と投資合計額が国内総生産(GDP)を大きく上回っており、超過分が経常収支赤字となる。この経常赤字は海外からの対米投融資によって埋め合わされることで、米実体経済は活力を保つことができる。この海外の資金の最大の出し手国は日本であり、20年ごろまでは米経常収支赤字分のほぼ全額相当が日本からのカネで賄われた。最近でも米赤字の4割以上が日本発のカネで補充されている。ということは、米経常赤字規模が膨らめば膨らむほど米金融市場では基本的に円売り、ドル買いが盛んになりやすい。実際の資金の動きは本グラフの純資金流入に反映するので、例え経常赤字が減っても流入額が増えればドル買い、円売りが盛んになる局面もありうるわけだ。

こうみると、現在の円安・ドル高基調はドル安を好むトランプ氏の意向や米利下げ、日銀利上げをさほど気にしない米金融市場でのヘッジファンドなど投資家の思惑が大きく影響していることになる。投機的な勢力は、第2次トランプ政権が打ち出す大型減税や規制撤廃によって米経済が一段と加速すると予想している。その影響で、日本を含む海外の投資家たちも米国株式などドル資産を買うので、どうしてもドル高に振れやすいのだ。

巨大なドル買いの大波の中で、日米間の金利差は依然として高水準で4%を超えるので、もとより円安の是正は困難だ。日銀利上げは小幅であっても住宅ローン金利や中小企業向け貸し出し金利を押し上げ、停滞する国内需要を押し下げる。利上げを急ぐべきではない。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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