〝サラリーマン増税〟ドサクサ復活か 石破政権、退職金課税強化が再燃「103万円の壁」議論の隙に…増税・負担増の路線が再始動
zakzak by夕刊フジ / 2024年11月19日 15時30分
「年収の壁」撤廃が世の中の話題になるなか、「増税・負担増」路線が再始動している。首相の諮問機関の政府税制調査会で、同じ会社に長く勤めるほど退職金への課税が優遇される制度の見直しについて議論が始まった。退職金課税の強化は、昨年の岸田文雄政権当時にも政府税調の中期答申に盛り込まれたが、「サラリーマン増税」と大炎上し、岸田前首相らが打ち消しに走った経緯がある。いったん葬られたはずの増税案が、税調メンバーが代わり、石破茂政権誕生を受け、ゾンビのように蘇ってきた。
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退職金への課税は現在、勤続20年を超えると、所得計算時に控除できる額が年40万円から70万円に増える仕組みだ。差し引いた額に2分の1をかけ、所得に応じた税率をかけた金額が納税額となる。
政府税調は15日の会合で、退職金課税を見直すかどうかの議論を開始した。財務省は控除額が変わる現行の仕組みが30年以上変わっていないと説明した。
与党税制調査会でも月内に本格化する2025年度の税制改正論議で、退職金課税を議論する。自民党の宮沢洋一税制調査会長は15日、25年度の税制改正論議を見据え「議論をしていくことになる」と明言、25年度税制改正大綱への反映を模索する。
退職金控除の見直しが持ち上がったのは、昨年6月の政府税調が出した中期答申だった。「サラリーマン増税」との批判を受けると、宮沢氏は7月、「政府税調はものを決める機関ではない」とし、中期答申は「今の政府税調のメンバーの最後ということで、『卒業論文』みたいなもの。正直言って制度の紹介がほとんど。一部のマスコミが面白おかしく報道している」と話していた。
だが、世の中が「年収103万円の壁」の議論で盛り上がっている隙に、何食わぬ顔で議論が再浮上してきた。納税者もなめられたものだ。
現行制度では、退職金課税の優遇は終身雇用を前提とするため、若手や中堅でキャリアアップなどを目的に転職したい人が、不利になるとの指摘もあるのも事実だ。
税調に出席した有識者からは転職が増え、「(企業は既に)退職金を積み増すよりも、今の給与を手厚くする傾向にもなっている」との意見も出た。
第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは「労働市場の流動性を高めるという意味では、将来的に退職金課税の優遇をなくした方がいいとはいえる。ただ、家計が厳しい世帯が多い現状では、もろ手を挙げて賛同できるような施策ではない。対象となりそうな就職氷河期世代(1993~2004年ごろに高校・大学を卒業)は、ただでさえこれまで割りを食ってきた世代で、優遇の廃止は痛手が大きい」と話す。
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