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日本の解き方 「年収の壁」引き上げ「178万円」要求へ どうするべき国民民主、維新と結託も一つの手 ハイリスク・ハイリターンの選択肢も

zakzak by夕刊フジ / 2024年12月25日 11時0分

「年収103万円の壁」引き上げについて、与党税制改正大綱で「123万円」と明記された。「178万円」を要求している国民民主党としては今後、どんな手段があり得るのか。

少し前の本コラムで「財務省と自民税調の〝悪だくみ〟減税圧縮・穴埋め増税 野党分断で予算修正阻止 足並み乱れた間隙狙い…特定野党に便宜も」と書いた。地上波の番組では、「3党幹事長間の合意文書は「紙」だから破れる」という不吉な予想を言い、当たってしまった。結果的に、冒頭のように与党税制改正大綱では「123万円」となった。

その背景には、日本維新の会の存在がある。財務省と自民党の税制調査会は、維新と国民民主党を両天秤(てんびん)にかけ、どちらかが予算に賛成してくれればいいという状況になっている。実際、補正予算案には両党が賛成し、キャスチングボートを握るのは国民民主だけではなくなっている。

これは、ゲーム理論における「非協力ゲーム」の状況だ。「協力ゲーム」と「非協力ゲーム」の区別は、ノーベル経済学賞を受賞した数学者ジョン・ナッシュ氏が1951年に提唱した。ナッシュ氏によれば、「協力ゲーム」においてプレーヤー間のコミュニケーションが可能であり拘束力を持つ合意ができるのに対して、「非協力ゲーム」においてはプレーヤーがコミュニケーションをとることができず、拘束力のある合意ができない。

まさに、財務省・自民党、維新、国民民主党はその関係だ。維新と国民民主党は結託できず、財務省・自民党に弄(もてあそ)ばれている。結託できない場合、1回であれば財務省・自民税調は両者の要求をのまないで予算を通すこともできるが、今回は補正予算と来年度予算の2回をうまく通さなければいけない。となると、対処が手軽な相手に便益を与えて乗り切ろうとする。いうまでもなく維新だ。

維新が掲げる「教育無償化」は、補助金タイプの政策であり、将来は増税もあり得るので、財務省も受け入れ可能なものだ。一方、国民民主党の「年収の壁引き上げ」は減税政策だ。財務省にとっては過去30年間にわたり主張してきた「減税は効果がない」というウソがバレかねず、受け入れ難い。

ここで、国民民主党の手としては、維新と互いに「抜け駆けしない」と結託するのがセオリーだ。そうなると、ともに欲しいものが手に入る。

結託ができないとなると、ゲームの土俵を変え、第三者を味方につける必要がある。つまり、国民民主党は世論を味方にできれば財務省・自民党と維新をともに打ち破ることとなる。選挙で浮足だった自民党を破るし、維新は減税を自民党と一緒になって妨げたというイメージになるからだ。

しかし、この戦略は、国民民主党にとってハイリスク・ハイリターンだ。うまくいけば、世論が減税を強く希望するから来夏の参院選で勝てるかもしれないが、当面の目立った成果がなく、実行力がないとして逆に失望を招くかもしれない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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