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渡邉寧久の得するエンタメ見聞録 〝血なまぐさいシンデレラ〟童話からかけ離れた残虐ヒロインの復讐劇 映画「シン・デレラ」

zakzak by夕刊フジ / 2024年10月21日 6時30分

換骨奪胎か曲解か、拡大改作なのか。

世界中の多くの子供たちが読み親しむ物語「シンデレラ」をベースにした映画「シン・デレラ」(ルイーザ・ウォーレン監督)が25日に公開されるが、これがなんとも、いやはやという代物。

義母や義理の姉にいじめ抜かれても健気に歯を食い絞る少女の姿は、ほんの一瞬だけ。かわいそうなイメージではなく、汚れたシンデレラ、血なまぐさいシンデレラが暴れまわる。

重低音の劇伴が不気味さをにおわせる冒頭。むかしむかし、あるところに、という童話の定番の導入はなく、これから何か予期せぬことが起こるであろうと、不安をあおるだけあおる。

いじめどころか、虐待、拷問というレベルの肉体的加害。さらには、義母と義理の姉たちが死の寸前まで加害し、苦しさのあまり「殺してほしい」と懇願する召使いのとどめを刺し、死体処理に手を汚すシンデレラ。

そんな矢先、庭で見つけた古びた本。シンデレラの前に魔法使いのフェアリーゴッドマザーが出現する。3つの願いごとがかなうという。権利を手に入れたシンデレラは、王子さまと踊りたい、と願う。そこで王子さまに見初められれば、本来の童話同様めでたしめでたし、になるが、そうは運ばない。義理の姉とすでにできていた王子さまは、シンデレラをあざ笑うかのように裏切りを仕掛ける。

2つの願いを使い切っていたシンデレラは、最後の願いとして「復讐」を選ぶ。殺人鬼シンデレラがこの瞬間、姿を現す。虐げられ続けた側が、虐げた側へ牙をむく復讐劇。凶器になるのは、童話では夢をかなえることになるガラスの靴だ。ピンヒールが、頭蓋に食い込み、喉をかき切り、次々に復讐を成し遂げていく。相手を仕留めた後のシンデレラの笑いが、不気味さ極まりない笑いで…。

童話には教訓がつきものだが、この作品にもある。庭で見つけた古びた本。自分で物語を付け加えることができる本。要するに、人間には「自分で新しい物語を書く」自由があるということ。その物語が良書となるか悪書となるかは、その人次第ということを伝える、シンデレラスプラッターだ。 (演芸評論家・エンタメライター)

■渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう) 新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクを経て演芸評論家・エンタメライターに。文化庁芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。

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