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日本の解き方 「年収103万円の壁」財源案に地価税 導入すれば経済に悪影響も 古川元久氏の不用意な発言、議論は財務省のペースなのか

zakzak by夕刊フジ / 2024年12月27日 6時30分

「年収103万円の壁」引き上げの「財源」をめぐり、国民民主党から「地価税」の提案があったという。

これを提案した古川元久代表代行は「東京の地価はバブル期を超えている。地価高騰を抑制する地価税というのがあるが凍結されている」と言及し、「3党の協議の中で『例えば、こんなのも考えたらどうですか』ということも内々に言った」としている。これは新聞報道だが、外資向けの増税を言ったもので、報道では切り取られたとの指摘もある。ただし、外資だけに増税が可能かどうか疑問だし、可能であっても有力な財源にはなり得ない。

古川氏は、1988年4月に大蔵省(現財務省)に入省し主税局に配置された。古川氏が主税局に在籍中、主税局の他部署では地価税導入に向けて検討が行われていた。91年5月に地価税法が成立した。地価税は新税であり、嫌われて当然なのに、当時は国民の支持があり反対は少なかった。その当時、バブル期で土地総額は国内総生産(GDP)の5倍を超えるなど、行きすぎた地価の上昇は誰の目にも明らかだったからだ。

古川氏は、その後、留学し大蔵省を退官している。今回の提案は見習い時代の地価税の「成功体験」を思い出したのだろうか。ただし、地価税は、バブル崩壊後その歴史的使命を終え、98年度以降は課税を凍結されている。基本的に法人中心の大地主に限定的に課税され、6年間の税収は2・4兆円だった。

古川氏は2015年に『財政破綻に備える 今なすべきこと』という本を出しているが、その紹介を見ただけで筆者の頭はクラクラする。«1000兆円を超える財政赤字、すでに1945年の敗戦時を上回っている日銀のバランスシートに占める国債の割合、そして円安による輸入物価の上昇。財政破綻や円暴落のリスクは、もはや回避不可能ではないかと思われるぐらい高まっている»とアベノミクス批判のオンパレードだ。

つまり、国債残高だけで財政状況を論じる財務省思想そのままであり、日銀を含めた統合政府ベースで財政を考えないことに懸念を抱かざるを得ない。いまや国際通貨基金(IMF)ですら、統合ベースでのネット債務残高を公表し、それが各国の財政リスクを的確に表しているにもかかわらずだ。

今回も「年収の壁」引き上げは減税政策なのに、その財源として増税というチグハグな財務省ペースに完全に乗せられているように、筆者には思える。

今回の古川氏の発言は、国民民主党のものではないと、玉木雄一郎代表は言う。筆者としては、期待が大きいだけに、古川氏はあまり不用意な発言をしない方がいいと思う。

国民経済計算(22年度年次推計)によると、日本の土地の時価総額は22年末で1309兆円、GDP比で2・3倍である。地価税導入時とは状況が違いすぎる。そのため、凍結された地価税の再導入はいうまでもなく日本経済に悪影響だ。

古川氏は今や15年の本の考えから転向しているというのであれば、はっきり言った方がいい。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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