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日本の解き方 「実質賃金」のプラス基調は続くのか 7月には再びマイナスの恐れ 政策の間違い続けばプラス化さらに遠のく可能性

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月14日 11時0分

厚生労働省が6日公表した6月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動を考慮した1人当たりの実質賃金は前年同月比1・1%増となり、27カ月ぶりのプラスだった。プラス基調は今後も続くのだろうか。

統計調査の中身をみると、「名目値」の現金給与総額は、基本給・家族手当・超過勤務手当など「決まって支給する給与(定期給与)」と、ボーナスなどの「特別に支払われた給与」からなる。前者は28万4342円(2・3%増)、後者は21万4542円(7・6%増)だった。結果として現金給与総額は49万8884円(4・5%増)となった。

「実質化」に使う消費者物価指数は、総合指数などに比べて高めに出る「持ち家の帰属家賃を除く総合」であり、前年同月比3・3%上昇だったので、現金給与総額の実質値はプラスだった。しかし、給与のベースになる「決まって支給する給与」の実質値は、1・0%減だ。

しかも、厚労省担当者の話として、昨年まで7月にボーナスを支払っていた事業所が前倒しで6月に支給した事例もあるという。6月に行われた定額減税に合わせて7月のボーナスを前倒しした事業所もあったようだ。

実質賃金の対前年同月比の推移をみると、2022年4月に1・7%減になると、その後マイナス幅を拡大させ、23年1月に4・1%減となり、その後、マイナス幅は縮小傾向だ。ただし、今年5月でも1・3%減であり、6月の1・1%増はこれまでの回復傾向から大きくはみ出ている。23年1月からのマイナス幅の縮小期間における傾向線から推計すると、6月はせいぜい1・3%減程度にしかならない。

なお、厚労省の前年同月比による実質賃金統計は、ボーナス期の6月と12月には上振れする傾向がある。こうした推移からみると、7月には、ボーナス前倒しなどの反動により、実質賃金が再びマイナスになる可能性はかなりあるだろう。厚労省でも「今後を注視」と警戒している。

7月以降はどうなるだろうか。消費者物価指数の「持ち家の帰属家賃を除く総合」は、2%半ばから3%程度で推移するだろうから、6月の「決まって支給する給与」が3%程度以上の増加にならないと、安定的に実質賃金はプラスにならないだろう。これまでの傾向線からみると、安定的にプラスになるのには、あと1年程度以上を要する。

もう少し早くプラスを達成するためには、6月に2・5%だった完全失業率がもう一段低下して2%前半になり、名目賃金がもう少し高くならないと難しいのではないだろうか。

日銀の追加利上げ決定後の株価の急落を受けて、財務省、金融庁、日銀の三者協議が6日行われ、日本経済の回復基調が確認されたという。

だが、本コラムで強調しているように間違った金融政策や財政政策が今も行われている。そうした間違いが続くのであれば。ますます実質賃金のプラス化は遠くなる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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