1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 政治

ニュース裏表 峯村健司 中国軍機〝領空侵犯〟真の狙い 自衛隊機は「警告射撃」の検討をすべきだった 中国のSNSで「報復だ」エスカレートに警戒を

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月31日 15時0分

中国人民解放軍のY9情報収集機が26日午前、東シナ海上空の日本の防空識別圏に侵入したのを自衛隊が確認した。航空自衛隊・新田原基地(宮崎県)のF15戦闘機と、同・築城基地(福岡県)のF2戦闘機が緊急発進(スクランブル)して、日本の領空に近づかないように警告したが、情報収集機は長崎県五島市の男女群島沖の南東側で旋回をしていた。

そして、午前11時29分ごろから2分間、男女群島沖約22キロの領空を侵犯した。その後も、同諸島の南東沖上空を旋回し、午後1時15分に中国の方向に戻ったという。

中国軍機が日本の領空を侵犯したのは初めてのことだ。これについて、中国外務省報道官は翌27日の会見で、「中国はいかなる国の領空も犯す意図はない」と釈明した。

だが、情報収集機の航路や速度からみて、故意に領空侵犯した可能性が高いと筆者は分析している。

情報収集機の速度は戦闘機よりも遅く、中国軍機の航行には中国独自の衛星測位システム「北斗」が使われており、航路を外す可能性は低いからだ。

では、中国側の真の狙いは何だろうか。筆者は2つの目的があったと推察する。

1つは、日本側の対応能力を探る狙いだ。長崎県をはじめ九州には、中国が「台湾併合」に向けた軍事行動をとった場合、自衛隊と米軍の重要な拠点がある。長崎県の佐世保基地には米海軍の強襲揚陸艦が配備されているほか、今回スクランブル発進した新田原、築城両基地は戦闘機の出撃拠点となる。意図的に領空侵犯をしたうえで、日本側の反応や対処を見極める狙いがあったのだろう。

岸田文雄首相が9月の自民党総裁選への不出馬を表明して、「レームダック(死に体)」の状態となっている。こうした政権移行期を中国側は「権力の空白」と過大評価して、相手国を挑発する傾向がある。総裁選レースに世論の関心が向いている日本の間隙を突いた可能性があるとみている。

もう1つが、海上自衛隊の護衛艦が中国領海を航行したことへの「意趣返し」の可能性だ。中国東部浙江省の沖合を航行していた海自護衛艦「すずつき」が7月4日午前、一時、中国の領海内に入った。防衛省関係者によると、護衛艦は中国軍の訓練監視をしていたところ、誤って進入したという。

今回の領空侵犯について、中国のSNS上で「報復だ」などと評価する書き込みが相次いでいる。ただ、各国の艦艇は沿岸国の秩序や安全を害さなければ領海を通過できる「無害通航権」が国際法で認められており、自衛隊艦が領海を通過したことは何の問題もない。

一方、外国の航空機が許可なく他国の領空に侵入することは「重大な主権侵害」であり、国際法上では撃墜することも認められている。つまり、領空侵犯を既成事実化できた中国側の方が得たものは大きかったといえよう。

今回の日本政府の対応は生ぬるかったと筆者は考える。せめて自衛隊機による警告射撃の検討をすべきだったのではないか。1987年、沖縄周辺の領空を侵犯したソ連の偵察機に対し、自衛隊機は警告射撃をしており前例があるからだ。

今回の件を受けて、中国側は日本に対し、より強硬な軍事行動をとる可能性がある。日本としてどのような対策をとるべきか。自民党総裁選の候補を含めて徹底的な議論をすることが急務だろう。 (キヤノングローバル戦略研究所主任研究員・峯村健司)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください