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BOOK 小説家・カツセマサヒコさん 結婚も離婚も、するもしないも…「男性の加害性」に向き合い、過去と未来をどう生き得るか 『ブルーマリッジ』

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月10日 10時0分

──会社では正義を語る雨宮ですが、婚約者との間である問題が起こる。そこから「過去の加害」というテーマが浮かび上がってきます

「男性性の加害性を考えたときに、一番その影響を受けやすいのは、近くにいる配偶者ではないかと思ったんです。無自覚の加害が起きやすいのは家庭ではないか。そう考えたとき、加害と結婚という、一見遠く離れたテーマが結びつきました。過去の加害に向き合う際には、傷ついた人がいる以上、加害者が過ちを認めても救われることはないし、加害の意識から逃れることも許されないだろうということを、登場人物にも自分自身にも課しました。ただし、過去の加害に気づくことで、未来の加害を減らすことができる。それがせめてもの希望と思えるように書きました」

〝生活〟を救いに

──追い詰められた土方に手を差し伸べるのが同僚の三条です。被害者にも加害者にも〝人〟が必要だと痛感させられます

「ピンチになった男性主人公のケア役を女性が担う物語が多いですが、そのパターンから脱却したくて、同僚の男性にしました。三条は土方に〝生活〟を教えます。土方の未来を創るのは地に足の着いた生活だということを示すためにも、土方が生まれて初めてエプロンをする場面を書こうと決めていました」

──非婚・未婚が増える時代に、結婚を描く意味をどう考えていますか

「僕自身は結婚していますが、肌感覚として、結婚しようと焦っている若い人は多いです。と同時に、同じくらい離婚したがっている人もいる。『なんなんだこれは!』という気持ちがずっとあって、この謎を解明したかった。結婚に多くの夢と義務を社会全体が乗せすぎた結果、いつのまにか、結婚がすごく重たいものになってしまったんだと思います。結婚も離婚も、するもしないも、今は自分が幸せになるための選択肢でしかないはずです。そのメッセージを少しは小説に込めることができたかなと思っています」

(取材・砂田明子 撮影・酒巻俊介)

『ブルーマリッジ』 1760円(税込み)・新潮社

行きつけのスペインバルで年上の恋人にプロポーズし、会社ではハラスメント対策に乗り出した20代の雨宮守。順調に堅実に進んでいるはずの人生に、思わぬ落とし穴が待っている。デキる営業マンとして生きてきたはずの50代の土方剛は、妻から離婚を切り出され、部下にハラスメントを告発される。人生の岐路に立たされた二人の男性。彼らはどのように自らの男性性と加害性に向き合い、家族や大切な人と関係を結びなおし、過去と未来を生き得るのか。価値観が大きく変化する時代に錨(いかり)を下ろす、傑作長編。

■カツセマサヒコ 1986年東京都生まれ。37歳。大学卒業後、一般企業に就職。趣味で書いたブログをきっかけに編集プロダクションに転職後、独立。Webライターとして活動しながら2020年『明け方の若者たち』で小説家デビュー。同作はベストセラーとなり映画化された。2021年、川谷絵音率いるバンド「indigo la End」の楽曲を元にした小説『夜行秘密』を書き下ろし。『ブルーマリッジ』が3作目の長編小説。

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