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日本の解き方 「骨太の方針」の評価と懸念 原案に「実質賃金」の文字なし 財務省の〝書きたい放題〟許せば…まともな財政議論が不可能に

zakzak by夕刊フジ / 2024年6月18日 11時0分

経済財政諮問会議に臨む日銀の植田和男総裁(右)と経団連の十倉雅和会長(左)=7日、首相官邸(夕刊フジ)

政府は6月11日の経済財政諮問会議で「骨太の方針」の原案を公表した。評価できる点と懸念される点は何か。岸田文雄政権のどのような狙いが反映されているのだろうか。

評価できる点は、ようやく「デフレ完全脱却」といえるようになったことだ。賃上げのことにも言及できているのはいい。ただし、岸田政権は今一歩のところで経済対策を出し渋っているので、GDPギャップ(潜在的な供給力と実際の需要の差)が縮小せずに、実質賃金アップまで至っていない。今回公表された原案には、「実質賃金」の文字はない。

財政に関する部分では、相変わらず財務省の書きたい放題だ。

「債務残高対GDP(国内総生産)比は、2020年度にPB(プライマリーバランス=基礎的財政収支)の大幅な悪化から大きく上昇した。その後、2023年度にはPBの改善と名目成長率の上昇に伴い前年から低下する見込みとなっている」「金利のある世界への移行による利払費増加の懸念」「平時において債務残高対GDP比の安定的引き下げを実現する持続可能な財政構造の確保を進めていく必要がある」「その結果、国・地方のPBは、コロナ対応により2020年度に大幅に悪化した後、基調として改善傾向」「これまでの歳出改革努力を継続する」などの文言が並ぶ。

そもそも、狭義の政府の債務残高対GDP比にこだわっているだけで落第点だ。広義の政府(統合政府)のネット(純)債務残高対GDP比でみないと、真の財政の姿は分からない。

そのうち、財務省は「債務残高対GDP比が高いと経済成長しなくなる」と言ってくるだろう。4月9日の財政制度等審議会で、それを示唆するデータを提出している。そのデータは、10年頃、ハーバード大学の経済学者、カーメン・ラインハート氏とケネス・ロゴフ氏が出したものと似ている。当時は、データ処理上のミスがあったので、結果として債務残高とGDP成長率の関係の議論は下火になった。財務省は再びその議論に挑もうとしている。

もっとも今では反論も容易にできる。10年頃には入手困難だった統合政府のネット債務残高対GDP比の資料は、18年頃から国際通貨基金(IMF)で公表するようになった。理論的には債務残高対GDP比よりネット債務残高対GDP比のほうが優れており、実質経済成長率との関係は似たようなものが得られるが、日本に限れば、ネット債務残高対GDP比は若干のマイナスであり、財政運営を縛るものではない。

ネット債務残高対GDP比でみると、債務残高対GDP比を前提としていた「骨太」は大幅書き換えになる。コロナ対策は財政悪化要因というが、実は財政悪化ではなく経済成長を復活させたとなる。「金利のある世界」では利払費増大は財政悪化要因だが、ネットでみればそうではない。

もういいかげん、債務だけで財政問題を語るのはやめたらどうか。正しい財政状況が見えなくなってしまい、まともな財政議論ができなくなる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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