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自衛隊を支える改革 小笠原理恵 防衛省、全血液型対応の製剤を製造へ 自衛官の命を守る有事の治療態勢と「輸血」 先進国の戦車や装甲車は冷暖房完備でトイレまで

zakzak by夕刊フジ / 2024年11月9日 15時0分

東京・市ヶ谷の防衛省(夕刊フジ)

皆さんは点滴治療を受けた経験があるだろうか? 一般の点滴は少しずつ時間をかけておこなう。だが、戦場で受けた傷への輸血(以下、血液製剤投与も含み輸血と表記)はそうはいかない。自衛官の命を守る「輸血」について説明する。

「有事」が勃発した場合、負傷した自衛官の救命、治療態勢が万全でなければ、安心して任務に当たることはできない。

2022年12月に策定した防衛力整備計画に、輸血に必要な血液製剤について「自衛隊において自律的に確保・備蓄する態勢の構築」が掲げられた。23年12月、採血や成分の分離など凍結赤血球製剤の製造に使う機器計11点が、自衛隊中央病院(東京都世田谷区)に納入された。

これまでは、日本赤十字社から血液製剤を調達していたが、27年度までに凍結赤血球製剤の製造を目指すという。

また、防衛省は今年2月、「有事」に負傷した自衛官への輸血を目的に、血液型を問わず投与でき、止血効果がある血小板を含む「全血」の血液製剤を独自に製造する方針を明らかにした。産経新聞によると、異なる血液型でも副反応の少ない「低力価O型」の全血製剤を製造するという。冷蔵なので解凍作業は不要だそうだ。

戦場での負傷は「銃創」「爆創」といった特殊な戦傷になる。例えば、NATO(北大西洋条約機構)標準の弾丸直径は7・62ミリ弾。自動小銃では、この直径の30倍から40倍の人体破壊となるとの指摘もある。戦傷を負った場合、止血とともに大量の輸血をしながら搬送をして生存率を上げなければならない。

凍結や冷蔵された輸血は低体温症になるため、加温する必要がある。

優れた輸液加温装置が、パリで今年6月に開催された国際防衛装備展示会「ユーロサトリ2024」に展示されていた。乾電池1個で加温できる。自衛官の命を救う、こうした新装備品がほしいと思う。

先進国の最新の戦車や装甲車は冷暖房完備でトイレまである。兵士が車外に出た瞬間を狙われるからだ。戦車内には温水装置も設置されている。温水が確保できることで輸血の加温もでき、失血などで低体温症になってしまった負傷兵を温められる。

攻撃力のように派手ではないが、自衛官を守り支える装備にも注目してほしい。国防上、重要なはずだ。

■小笠原理恵(おがさわら・りえ) 国防ジャーナリスト。1964年、香川県生まれ。関西外国語大学卒。広告代理店勤務を経て、フリーライターとして活動。自衛隊の待遇問題を考える「自衛官守る会」代表。現在、「月刊Hanadaプラス」で連載中。2022年、第15回「真の近現代史観」懸賞論文で、「ウクライナの先にあるもの~日本は『その時』に備えることができるのか~」で、最優秀藤誠志賞を受賞。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。

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