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森永康平の経済闘論 ライブ・エンタメ市場にもインフレの波 近年は「コト消費」より「トキ消費」 オンラインからリアルへの誘導も成長課題に

zakzak by夕刊フジ / 2024年6月27日 6時30分

厚生労働省が発表した4月分の毎月勤労統計調査によれば、物価の影響を考慮した実質賃金は前年同月比0・7%減となり、過去最長を更新する25カ月連続マイナスの伸びとなった。総務省が発表した4月分の家計調査では、実質消費指数の季節調整値は14カ月連続マイナスとなっており、賃金の上昇速度を上回る物価上昇によって家計が節約に走っていることがデータに表れている。

しかし、ぴあ総研が発表した2023年のライブ・エンターテインメント市場の市場規模をみてみると、6857億円と昨年末に発表された推計値から449億円上方修正されており、統計を取り始めた00年以降で過去最高となった。多くの家計が節約をしてはいるものの、出すところには出すというメリハリが効いた消費行動をしている可能性がある。

近年の消費の傾向として「トキ消費」が挙げられる。モノやサービスを購入することで効能を得る消費行動を「コト消費」と呼ぶことがあるが、トキ消費とはアーティストのライブやスポーツの試合観戦に行くことで、訪れた場所、周りにいる人々といったその瞬間だけでしか味わえない体験をする消費行動を指す。

しかし、ライブ・エンターテインメント市場にもインフレの波が押し寄せている。市場規模と動員数から試算された平均的なチケット価格はこの10年ほどの間に20%近く値上がりしている。筆者は格闘技が好きでよく現地に観戦しに行くが、格闘技イベントは値上がりが顕著で、興行によっては最上級のVIP席が1席300万円、普通のVIP席が30万円、最も価格が安いA席でも1万5000円ということもあった。

チケット価格だけでなく、会場へのアクセスというハードルもある。そこで、コロナ禍を経て日本でもリモートワークが普及したように、ライブ・エンターテインメント市場においてもオンライン配信が一般的になった。興行ごとにチケットを買ってオンラインで視聴するPPV(ペイパービュー)であればチケット価格も安く、会場へのアクセスという難点も解消されている。

日本ではPPVは定着しないという言説があったが、足元では着実にPPVの市場規模は大きくなっている。今後はいかに無関心層をハードルの低いPPVに誘引し、そこで関心を持った層をいかにリアルの会場に足を運んでもらうか。これらがライブ・エンターテインメント市場のさらなる成長における課題となろう。

■森永康平(もりなが こうへい) 経済アナリスト。1985年生まれ、運用会社や証券会社で日本の中小型株のアナリストや新興国市場のストラテジストを担当。金融教育ベンチャーのマネネを創業し、CEOを務める。アマチュアで格闘技の試合にも出場している。著書に父、森永卓郎氏との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など。

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