日本の解き方 中国が台湾やフィリピンで暴走 漁船を拿捕、公船を追跡・監視…主権めぐり盗人猛々しい主張、日本でも脅威が現実化している
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月10日 6時30分
中国が台湾の漁船を拿捕(だほ)したり、フィリピン公船を追跡・監視するなど海洋での行動をエスカレートさせている。
台湾海巡署(日本の海上保安庁に相当)は2日、金門島周辺の海域で、台湾漁船が中国海警局に拿捕されたと明らかにした。
また、南シナ海において、中国海警局は同日、サビナ礁周辺でフィリピン公船3隻を追跡・監視したと発表した。
台湾近海の件については、拿捕された漁船が台湾なので、当然のことながら台湾当局が経緯を発表したもようだ。
一方、南シナ海のサビナ礁周辺の件で、中国から公表があったのは、政治的思惑があるのだろう。
まず、位置関係を確認しておくと、スプラトリー(南沙)諸島にあるサビナ礁は、フィリピンが実効支配し軍が拠点を置くアユンギン礁から東に約60キロの近距離にある。
中国がフィリピン公船の追跡・監視について公表した2日、中国とフィリピン両政府はマニラで、南シナ海の領有権問題に関する外務次官級協議を開いていた。
サビナ礁はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)にあるが、中国はサビナ礁を含むスプラトリー諸島に中国は主権を有していると主張している。
そもそも、2016年7月12日、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は、いわゆる九段線に囲まれた南シナ海の地域について中華人民共和国が主張してきた歴史的権利について、「国際法上の法的根拠がなく、国際法に違反する」とする判断を下している。ところが、中国はこの判断を「単なる紙切れ」と称し無視しているばかりか、逆に今回のサビナ礁の件ではフィリピンによる主権侵害に断固反対すると表明した。盗人猛々しいと言わざるを得ない。
一方、2日に開催していた中国とフィリピンの外務次官級協議では、中国側はアユンギン礁について両国が共同で管理するよう呼びかけてもいる。アユンギン礁については、上述のとおり、フィリピンが実効支配しフィリピン軍が拠点を設けているので、中国の要求はあきれるほど自己中心的だ。
中国側によるフィリピンへの分かりやすい形の恫喝(どうかつ)または、ゆさぶり工作であろう。
アユンギン礁周辺では、6月に中国海警局とフィリピン軍の衝突もあった。中国軍がフィリピン近海に空母「山東」を派遣したとの報道もあり、緊張が高まっている。
いずれにしても、中国がサビナ礁の主権を主張するのは、西にあるアユンギン礁ではフィリピンが実効支配しフィリピン軍が拠点を置いており、南にあるフィリピン領のバラバク島では米軍が使用できる滑走路を建設中だからだ。両地点に中国としてはクサビを打ち込みたいのだろう。
台湾も南シナ海も、中国は自分のものとしようとする傍若無人ぶりだ。南シナ海で起こったことは、台湾でも、そして東シナ海でも起きると長年言われ続けてきた。日本も中国の脅威が現実化している。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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