日本の解き方 不穏な中国や北朝鮮の動き いま日米首脳は〝最悪の配列〟有事の対応こそ政治の役割「政治とカネ」ばかりの衆院選で議論すべき
zakzak by夕刊フジ / 2024年10月22日 11時0分
衆院選や米大統領選のさなか、中国軍が台湾を包囲する形で軍事演習を行ったり、北朝鮮が韓国とを結ぶ道路と鉄道を一部破壊するなど不穏な動きをみせている。衆院選でも「政治とカネ」だけでなく、こうした問題も争点にすべきではないのだろうか。
台湾の頼清徳総統と中国の習近平国家主席、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記はそれぞれ政治信条がまったく異なり、いってみれば「危険な組み合わせ」だ。
極東アジアの安全保障において重要である米国のジョー・バイデン大統領は、健康問題などで次期大統領選も急遽降板し、予備選を経なかったカマラ・ハリス副大統領が後継候補となっている。バイデン政権は「死に体」で、誰が米国のリーダーなのかさえ分からない状態だ。
日本では、安全保障の専門家と思われていた石破茂首相が誕生したが、「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」や「日米地位協定の見直し」を不用意に言い出し、素人丸出しだ。
さらにまずいのは、日本では衆院選、米国では大統領選が行われていることだ。トップが選挙にかかりっきりで、中国による台湾を包囲した軍事訓練や南北朝鮮の連絡鉄道・道路破壊などについて適切なメッセージを出せていない。
石破政権は中国の軍事演習について注視するだけで、台湾有事になったらシーレーン(海上交通路)が途切れ、日本の存立危機事態になるのをあえて見ないふりをしているかのようだ。バイデン政権も朝鮮半島には関心が低く、北朝鮮から「米国の責任」と名指しされてもスルーしているように見える。頼氏と習氏が対立する東シナ海と、尹氏と金氏が対立する朝鮮半島にそれぞれ火薬庫があるときに、石破首相とバイデン氏(ハリス氏)の日米首脳は、ある意味で最悪の配列ではないだろうか。
せめて台湾有事や朝鮮半島有事に日本としてどのように対処するのかについて、衆院選で論戦してもらいたい。これらの有事はあってはならないものだが、日本の都合と無関係に起こりうるものだ。政治は有事の危機管理にこそ意味がある。平時であれば、官僚機構に任せておいてもさしたる支障はないが、有事の場合にはそうもいかず、政治家の出番となる。
今の平和安全法制において、台湾有事や朝鮮半島有事がどのような事態になるのか、首相自身が細かなシミュレーションを頭の中に叩き込んでいないと、自衛隊の最高司令官は務まらない。それぞれの場合に、どのように米国と連携をとるのか、もしくは日本だけで行動するのかなど、いざという場合にあたふたしないでほしい。政治家たるもの、国民の生命と財産を守ることが第一任務である。
「政治とカネ」も重要だろうが、安全保障に比べると優先度の低い話ではないだろうか。台湾と朝鮮半島は今そこにある危機のように筆者には思える。そうした危機を見ないようにするために「政治とカネ」に議論を集中しているようにすら筆者には思える。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)
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