バフェットの次を行く投資術 「日本型経営」の一つの理想形、信越化学工業 利益率は他の化学メーカーを凌駕 安定した雇用と現場への権限委譲で高い士気
zakzak by夕刊フジ / 2024年11月29日 11時0分
信越化学工業(4063)の歴史は「信濃の水」と「越後の石灰石」との出合いから始まった。つまり、長野県の豊かな水力が生み出す電力と新潟県・親不知の大地から採れる石灰石。この二つから化学肥料・石灰窒素を生産する「信越窒素肥料株式会社」が1926年9月に発足したのが同社の起源だ。
その後、世界の化学メーカーにおいて時価総額ランキング世界第4位となった。しかも、同社の現在の基盤となる塩化ビニル樹脂と、シリコンウエハにおいては世界ランキング第1位の座を占めている。
さらには、半導体製造における重要な材料であるフォトレジスト、マスクブランクスに加えて、メチルセルロースにおいては世界ランキング第2位である。日本が世界に誇る化学メーカーといえる。利益率においても他の日本の化学メーカーを凌駕(りょうが)する高さである。
同社がこのように大発展を遂げたのは、同社の中興の祖とされる小田切新太郎氏の貢献が大きいと考える。同氏の経営がどのようなものであったのかは、同社の経理部門で長年活躍した金児昭氏の『信越化学工業中興の祖 小田切新太郎 社長の器』(イーストプレス)に詳しい。
筆者は、小田切氏が主導した経営方針は、「日本型経営」のひとつの理想形だと考える。自らの保身ばかりを考えて、「コンプライアンス」を振り回し、社員のチャレンジ精神とやる気を失わせる米国型経営とは真逆である。生涯11回以上も転職を経験するとされる米国人が、われわれが考えるような愛社精神を持っているとは考えにくい。
それに対して、日本型経営で雇用が安定し、トップダウンではなく現場に権限が委譲されている日本型経営企業の社員の士気が高いのは当然だ。
長い目で見れば、欧米型経営の企業は衰退せざるを得ない。長期投資家は、日本型経営で長期的に発展する企業を見つける必要があるといえる。 (人間経済科学研究所、国際投資アナリスト・大原浩) =敬称略
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