知っておくと100倍楽しい 大河「べらぼう」キーパーソン 〝江戸のメディア王〟蔦屋重三郎 「吉原の女たちを救いたい」が本に目をつけたきっかけ 発禁処分への反撃にも注目
zakzak by夕刊フジ / 2025年1月21日 6時30分
5日にスタートしたNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。長く平和が続き、多彩な文化や流行が生まれた江戸中期。親も金もない身の上ながら、江戸のメディア王となった蔦屋重三郎(横浜流星)の生涯を描く。
初回から、きらびやかな花魁道中など、蔦重が育った吉原の華やかさとともに、死んだ女郎が着物を剥がれて裸で捨てられる暗い一面も描写され、「攻めた大河ドラマ」と話題になった。
史実によると、寛延3(1750)年に生まれた蔦重は、安永2(1773)年、吉原に小さな本屋を開く。その後、「版元」として出版業に進出。最初に手掛けたのは「吉原細見」。吉原の見世と所属遊女の名前を記したガイドブックだった。「吉原細見」はすでに江戸のベストセラーで、多くの版元が出版していたが、蔦屋版は縦長、見開きページの真ん中に吉原の通り、その上下に店名と所属遊女の名を料金付きで紹介する斬新な形。見世の配置がわかりやすい上に、値段もお手頃になり、大いに売れた。
メディア王と聞くと、富に執着する人物のようだが、「べらぼう」の蔦重が本に目を付けたのは「吉原の女たちを救いたい」という気持ちからだった。しきたりが多い吉原より、気軽な岡場所や宿場に客が流れ、吉原の下級女郎が飯も食べられないことを憂えた蔦重は、時の権力者・田沼意次(渡辺謙)の屋敷に潜り込み、直接訴える。しかし、意次本人に吉原に人を呼ぶ工夫をしているのかと逆に問われ、必死に考えるのである。
とはいえ序盤の蔦重はまだまだ世間知らずの若造だ。横浜の蔦重は、思いついたら即ダッシュ。したたかな吉原の女郎屋のおやじたちやライバルの本屋と渡り合い、時にはボコボコにされながらも立ち上がる。こういう人柄だから、喜多川歌麿、山東京伝、葛飾北斎、曲亭馬琴、十返舎一九ら多くのクリエイターから信頼されたのか。蔦重の成長も大きな見どころだ。
さらに田沼の失脚、〝倹約第一〟男・松平定信による「寛政の改革」で、主力商品の山東京伝の黄表紙・洒落本の発禁処分と財産半分没収という厳しい処罰を受けた蔦重が、どんな反撃を見せるのか。注目だ。 (時代劇研究家)
■べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ 1月5日にスタートしたNHK大河ドラマ第64作。脚本は「JIN―仁―」(TBS系)や「ごちそうさん」(NHK)を手がけた森下佳子。
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