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兼原信克 安倍総理の遺産 GHQと独立後の左傾化…歪められた日本の科学技術、産業技術政策 安保技術開発促進の10兆円基金創設を

zakzak by夕刊フジ / 2024年7月6日 15時0分

安倍晋三首相は、海上自衛隊の観艦式を観閲した=2015年10月、神奈川県沖の相模湾(夕刊フジ)

安倍晋三元首相は、8年の在任期間中、1兆円以上の防衛費増額を果たした。岸田文雄首相は、防衛費の倍増をぶち上げた。それでも、習近平国家主席率いる中国の大軍拡の前ではかすむような金額である。特に、日本では安全保障関係の技術開発が遅れている。

米国国防省は毎年、約10兆円を技術開発につぎ込む。量子、バイオ、最先端情報処理、脳科学など、あらゆる分野での最先端技術は、明日の戦場を激変させる。最先端技術で優位を保つことは、国家安全保障の最優先課題の一つなのである。

世界随一の軍事強国を目指す中国は、共産党一党独裁体制の下で、官も民も軍も産もなく、国全体が一体となって軍事技術開発に驀進(ばくしん)している。共産党による「軍民融合」の掛け声の下、国家を挙げたプロジェクトが次々と打ち出される。

その裾野は広い。宇宙分野では月の裏側に人工衛星を飛ばして、世界をあっと言わせた。無人戦闘ロボットの死命を制する充電池開発では、EV(電気自動車)開発にかこつけて巨額の補助金が支出される。日本は遠く離れて中国の後塵(こうじん)を拝している。

国家の一丁目一番地は、「国家と国民の安全」である。科学技術政策も、産業技術政策も例外ではない。

ところが、戦後日本では、ダグラス・マッカーサー元帥率いるGHQ(連合国軍最高司令部)の下で、日本の戦争遂行能力を根こそぎ剥ぎ取る方針が採択された。日本の学界、産業界は、国家安全保障から完全に隔離された。

のみならず、冷戦中は東側陣営に軸足を入れた革新政党が、日本の科学技術が軍事利用されることに徹底して反対した。左傾化した学術界は、頑として学術界と防衛省が協力することを拒否してきた。日本学術会議はその典型である。

GHQと独立後の左傾化によってゆがめられてきた日本の科学技術、産業技術政策を見直すときである。国家安全保障のために、最先端技術を切り開くということであれば、いくら予算をつぎ込んでも補助金とは言われない。岸田政権は経済安全保障法制の下で、2年間で5000億円の予算を学術界につぎ込んだ。

しかし、本当に国家が手当てすべきは、戦後日本の発展を支えた優れた民間企業のデュアルユース(軍民両用)分野の技術者たちである。日本の宝はそこにある。

首相を本部長とする「安保関連技術推進本部」を立ち上げ、自衛官や専門家を呼び、有望な分野を絞って委託研究の形で民間企業に資金提供するべきである。10兆円の「安保技術開発促進基金」をつくり、毎年1兆円を使うべきである。それが日本が産業国家として生き残る道である。

■兼原信克(かねはら・のぶかつ) 1959年、山口県生まれ。81年に東大法学部を卒業し、外務省入省。北米局日米安全保障条約課長、総合外交政策局総務課長、国際法局長などを歴任。第2次安倍晋三政権で、内閣官房副長官補(外政担当)、国家安全保障局次長を務める。19年退官。現在、同志社大学特別客員教授。15年、フランス政府よりレジオン・ドヌール勲章受勲。著書・共著に『日本人のための安全保障入門』(日本経済新聞出版)、『君たち、中国に勝てるのか』(産経新聞出版)、『国家の総力』(新潮新書)など多数。

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