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日本の解き方 中央銀行の「独立性」めぐる誤解 大きな方針に政府は関与可能 ギリギリを攻めるトランプ氏、絶妙な利上げ牽制発言

zakzak by夕刊フジ / 2024年8月22日 11時0分

米共和党のドナルド・トランプ前大統領が、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策について、「大統領が少なくとも口を出すべきだと感じている」と述べ、大統領の関与が必要との考えを示したという。

トランプ氏は、大統領時代にもFRBの金融政策に口を出したことがある。利上げについて牽制(けんせい)する発言をしばしば行ったが、FRBはそれに左右されなかった。

トランプ氏は、大統領になるまで政治家や軍人の経験はなく、役人でもなく、不動産業に従事してきた。不動産価格は、理論的には物件の将来収益を金利で割り引くことで求められる。

こんな式を知らなくても、利上げ(金融引き締め)は不動産価格にマイナス効果になることは、不動産業界であれば経験則から常識だろう。つまり、トランプ氏の発言は、長年不動産業界にいた感覚から自然に出ていたとみていいだろう。本コラムの読者であれば、トランプ氏は金融緩和志向であると筆者が書いたことを覚えているはずだ。

トランプ氏からみれば、FRB議長は、〝関連子会社の社長〟にすぎない。この理解は正しい。もっとも、これまでの歴史により積み上げられた慣行によって、子会社の長期的な大きな方針には関与していいが、短期的な、例えば日々のオペレーションまで関与しないというのが、「中央銀行の独立性(手段の独立性)」として確立された考えだ。

トランプ氏の個別の利上げ牽制発言は、この「手段の独立性」との関係において際どいものが多かったが、FRBは、「トランプ氏の発言は、政府とFRBとの間の大きな方針」という大人の態度で対応してきたので、大きな問題にはならなかった。

また、トランプ氏も、パウエルFRB議長について「非常に良い人を据えた」とし、「FRBは最善と感じる金融政策を実行すればいい」とも語ったうえで、「『大統領はそんな発言をすべきではない』と批判する人もいるだろうが、一般市民だったら言ったであろうことを話しているだけだ」としていた。

この範囲であれば、ギリギリFRBの手段の独立性を犯していないだろう。

筆者のみるところ、トランプ氏は中央銀行の手段の独立性を十分に理解しており、その上でギリギリの政治的な発言をしている。

おそらく、トランプ氏が次期大統領になっても、前の大統領時代と同じようになるだろう。むしろより巧妙になる気がする。もっとも、トランプ氏は、2026年5月まで任期のあるパウエル議長について、「彼に任期を全うしてもらうつもりだ」として、「彼が正しい政策運営を行っていると考えられる場合は特にそうだ」と語り、任期満了前に解任を目指さない考えを示している。

ここもギリギリだが、「手段の独立性」を犯していない、絶妙な言い方をしている。ただし、手段の独立性を十分に勉強していないマスコミからは攻撃される可能性がある。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

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